ねぇ、鏡夜。

何だ、

それって、面白い?





   ☆正しい休日の過ごし方?☆






「これか?なかなか良い本だと思うぞ。」



鏡夜が今読んでるのは、あたしには理解できない、ドイツ語で書かれた洋書。
どこかの美術館にでも飾ってありそうな絵の表紙。



「その本のタイトルってなんて意味?」

「これか?邦題では出されていない本だからな。まぁ、安らぎ・・・が近いか。」

「『安らぎ』ね〜。」



質問に答え終わると、鏡夜はまた本に目を落とした。





そのあたしにとっての『安らぎ』は。
『安らぎ』という名の本に夢中で。
あたしの相手なんてしてくれない。
今日はせっかくの休日なんだけどな。
いつも鏡夜は仕事で忙しいし、たまの休日くらい、
一緒の時間を持ってくれても良いんじゃないの?
あたしはそのまま鏡夜を見つめ続けた。



「俺の顔に何かついているのか?」

「へっ!?」



突然、鏡夜は顔を上げて言った。



「べっ、べべべ別に何もついてないよ?」

「ずっと見てただろう?」

「ぇ・・・それは、その〜。」

「暇なのか?」



なんてことを言ってくれるんだ、この人は!



「ええ!鏡夜に比べればあたしは暇ですよ!本なんてあんまり読まないし。
 せっかくの休日に何か特別な用事があるわけでもないし!?」



言ってしまってから、なんて可愛くない女なんだろうと思った。
まだ結婚1年目なのに。
ウザイ女なんて思われたらどうしよう?



「そうだな。確かにはゆっくりと本を読むようなタイプじゃないな。」

「なっ!」

「自分で言ったんだろう?」



そう言われると、あたしは文句の言い様が無かった。
だから、そのままプイッとそっぽを向いてやった。
ああ、我ながら本当に可愛くない・・・。



「クスクス。そう怒るな。ほら、こっちを向くんだ。」



誰が向くもんですか!こうなりゃ意地よ!!



「こっちを向いて、。」

「っ!」



耳元で、低くて色気のある声でそう囁かれた。
鏡夜の息も耳にかかって、思わず真っ赤になって振り向いた。



「やっと、向いたな。顔が真っ赤だぞ?」



カァッっと、更に顔を赤らめた。



「さて。」



鏡夜は本をテーブルの上に置き、立ちあがった。
そしてそのままあたしも抱き上げた。(お姫様ダッコで)



「ちょっ、鏡夜!?」

「ちょっと早いが、愛しの姫君がご機嫌斜めなので、
 一緒に時を過ごそうか。せっかくの休日だしね?」



なんだか、せっかくの休日の部分を強調された気がする。
じゃなくて!



「そんっ、待って鏡夜!!」

「何かな、お姫様。」

「・・・っ。いえ何でもありません。」



にっこり笑った鏡夜の向こうに、黒いものが見えた気がしたんだ。





今度は読書中の鏡夜の邪魔はしないようにしよう。
ベッドの中でそう誓っただった。