思った以上にでかかった・・・
さすがはアトベッキンガム宮殿。
☆I want you not to part〜離れないで欲しい〜☆
忍足君の車は跡部君の家の敷地内にゆっくりと入っていく。
そんな中、私はお屋敷をずっと眺めていた。
いや、呆然としていたのかもしれない。
「相変わらず、いつ来ても跡部ん家には呆然とさせられる毎日やわ」
「忍足君でもそう思うんだ・・・ってか敷地内を車で通らなきゃ車庫に行けないってのだけでも驚きなんだけど・・・」
すると、忍足君はビックリした顔をして私を眺めていた。
えっ!?何?私、なんか変なこと言った??
「やっぱり、ちゃんも一般人やな〜あんな高級マンションに住んどいて」
「いたら殴られてるよ」
「そんなありえること言わんといて〜」
一般人ですとも、そりゃもう!!
あのマンションは事務所からのものだから私たちの身分とだいぶ違う代物だし。
そう話していたらいつの間にか到着したらしく、車のドアを開けてもらっていた。
私はおそるおそる足を車からおろし、続いて体も車から離した。
目の前にはメイドの方がざっと10名以上立って、私達を迎えてくれた。
本当、景吾っておぼっちゃまだ・・・
そのまま1人のメイドに連れられて私と忍足君は家の中を案内された。
そしてたどり着いたのは景吾の部屋。
「景吾様、お客様です」
『ああ、入れ』
「どうぞ」
昨日聞いたはずの声がやけに懐かしくかんじた。
私と忍足君はメイドが開けてくれたドアから景吾の部屋へと足を進めた。
すると、景吾はソファに1人座っていた。
読書でもしていたのだろうか、本を片手に持って。
しかも、メガネですよ!!
「ちゃん、真っ赤やで・・・」
「なんだ?俺様を見て赤くなったのか?」
私をからかう声が聞こえる。
景吾なんか、からかいながら言ってくる。
「おい、黙ってんな。図星かよ・・・」
「マジかいな。なんかショックやわ〜」
「だって・・・メガネなんて卑怯だ・・・」
景吾はその言葉を聴いて、メガネをはずした。
正確にはそういう動作をしたのがわかっただけだが。
「これで、いいのか?さっきから全く目があってねえ」
そう。私はさっきから景吾の顔を直視できてないでいたのだ。
「メガネなら俺もしとるやん」
「あっ、ごめん」
「なんか悲しく感じてくるわ」
笑いながら忍足君は私の頭をクシャクシャになでた。
おかげで髪の毛はグチャグチャ。
もう!!せっかく朝整えたのに・・・
♪〜♪〜〜♪〜♪〜〜
着うたが部屋で響いた。
「俺や」
忍足君はその場で携帯を開いて耳に当てた。
『あっ、親父。なんや??』
『・・・了解、じゃあすぐ行くわ。・・はいよ。じゃあな』
ピッ!
「すまんな。お袋が急遽旅行から帰ってくるねん、それで迎えに行ってくるわ。2人でゆっくり昔話でもしたらええ。じゃあな〜」
そのまま忍足君はまた、私の髪をグチャグチャにして帰っていった。
なんか嵐のような人だ・・・
私は呆然と立ち尽くしてしまっていて、景吾が近くまで来ていることに気づかなかった。
「おい。“昔話”って忍足に話したのか?」
「うわっ!ビックリした・・・。・・・うん。いけなかった?」
「いや・・・。ところでその髪、メチャクチャだな」
一生懸命直す私を見て景吾は笑ってみていた。
なんか、その笑顔に見惚れてしまった。
今日で見惚れるの2回目です。
「来いよ」
景吾に促されるままにソファに腰掛けた。
それはもうフワフワなソファで、高級感溢れてた。
私がソファを指で押したりしていると、景吾は私の後ろに立って髪に触れた。
私は過敏に反応してしまい、後ろを思いっきり振り向くと、景吾は私の頭を前に戻し、櫛を使い梳いてくれた。
「綺麗にしてやるから大人しくしてろ」
「うん・・・」
景吾の手が心地いい。
私は目を瞑り、髪の毛に神経を集中させた。
景吾はポツポツと話はじめる。
「に1つだけ聞きたいことがある。俺が1度落としたペンダント、どこで拾った?」
「・・・・事務所」
「事務所?どこのだ?」
「跡部プロダクション」
「あそこか・・・どうりで見つからないわけだ」
「探してくれたって聞いた。嬉しかった・・・景吾は私のこと忘れてないって思えたから」
景吾の指が髪から離れていく。
私は寂しくかんじ、景吾を見る。
すると、景吾は私の横に座るために移動してきた。
そして私はあることに気づいた。
「昨日寝てないでしょ?」
一瞬景吾の目が見開かれる。
「だって目の下にクマできてる。寝ていいよ。私は帰るから」
私が立ち上がろうとした瞬間手を引かれる。
「帰るな。いてくれ」
いつもの学校での強きな景吾はいない。
弱々しい景吾がそこにはいた。
「わかった。いるから寝て?」
「・・・ああ」
私はソファに座りなおした。
すると、タイミングを見計らったように景吾の頭が膝の上に。
「寝るならベッドに行こうよ」
「ここでいい」
「寝違えるよ〜」
笑いながら言う私に景吾はバーカって。
いつもの景吾だ。
「帰ってきて連絡寄越さなかった理由教えろ」
「まずは、連絡先がわかんなくて、病院に聞いてけど“景吾”って名前だけじゃ分からないって・・・
諦めかけてたときに氷帝への編入が決まって、景吾に初めて会った時に“景吾”のかんじがして、もしかしてって思った。
そしたら見事に当たってた。まさかこんなに美形とは思ってなかったけど」
「当たり前だろ。俺様はかっこいいに決まっている」
「ハイハイ」
軽くあしらうと舌打ちが聞こえた。
そしていっときの間沈黙が続くと、寝息が聞こえはじめる。
ヤバイ・・・足が痺れはじめている。
誰かに助けを求めたい気持ちでいっぱいの時、タイミングよくノックが。
『景吾様、遅くなり申し訳ありません。お茶を持って参りました』
静かにドアが開く中、景吾が微かに動く。
ヤバイ!!起きちゃう!!
でも、起きることはなかった。
入ってきたメイドは驚いた顔をしていた。
そして私に一言。
「ベッドへお運びしましょうか」
「あっ、いいですか?」
「少々お待ちください」
メイドは一度部屋から消えたが、すぐに男の人を連れて現れた。
男の人は景吾を軽々と抱えてベッドへ移す。
「よっぽどお疲れのようですね。景吾様が触られたりするのはもちろん、部屋へ入っても気づかずに寝てるなんて」
「そうなんですか?」
「人前で寝るのはお嫌いなようでして。お嬢様は特別なんでしょうね。お名前聞いてもよろしいですか?」
「です。」
「様!?あなたが・・・どうりで」
メイドは私の名前に心当たりがあるのだろうか。
「景吾様がまだ中学生の頃に一度だけ“”ってやつを調べろとおっしゃたことがありました。
でも、だんな様が私情で調査するな。と一喝されてしまったんです。
景吾様があんなに取り乱したのはめずらしかったので覚えていますわ」
「そうなんですか」
「それでは、景吾様もお休みのようですし、ご一緒にお茶しませんか?ちょうど私、今から休憩なんです」
「えっ!?いいんですか?」
「いいわけないだろ」
急に入り込んできた声。その主はベッドで横になりながらこっちを見ていた。
「起こしてしまいましたか?」
「ごめん。すぐに出て行くからまた寝ていいよ」
「さっきの聞いてなかったのか?お前はここにいろと言っただろ」
メイドはクスッと笑うと、「それでは失礼します」と男の人と出て行ってしまった。
おかげで今の現状は景吾と私の2人のみ。
景吾はなんか不機嫌だし・・・
「、こっちにこい」
私は指示されるまま景吾の元へ寄っていった。
そして、ベッドの端に座る。
「誰が膝枕をやめろと言った?」
「足が痺れたんです!」
「しかも、いてくれと言ったよな?」
「・・・スミマセン」
「わかればいい」
そういうと、私の手の上に景吾は自分の手を重ねて眠りに入った。
その際に一言呟いて。
その一言で私は無性に嬉しく、愛しくかんじていた。
景吾の寝顔を見ながら微笑む自分に気づかずに。
“もう、どこにも行くな”
いかないよ。
もう景吾から離れないから・・・
いつかSecretのことも言わなきゃね・・・
next→