氷帝学園、3年校舎。昼休み。
「〜辞書貸してぇな」
「えっ、別にいいけど」
「よくねぇよ」
訪ねてきたのは忍足侑士。そしてそれを阻止したのは跡部景吾。
どちらも学歴・人気共に氷帝学園1位、2位を争う美形の2人。
☆いつもの光景☆
「なんで跡部が邪魔すんねん」
「あーん?そんなの決まってるだろうが。は俺様のだからだよ」
「意味わからへんわ!みゆは跡部のものじゃあらへん!なぁ」
「あっ・・・うん・・・たぶん・・・」
気弱な。それもそのはず。この2人の雰囲気は尋常なものではなかった。
「の辞書をテメェなんぞが借りていいもんじゃねーんだよ」
「なんやて!?」
「お前の変な菌がうつるって言ってるんだ」
「それなら、跡部と一緒にいるほうがやばいやん。ほら、来てみ」
そう言うと、忍足は私を抱きしめた。
「え〜!?」
めっちゃ驚いたのはもちろん。
こんなの想像できるわけがない。
案の定、跡部の額には血管が浮き出ていて、忍足は満面の笑みで抱きしめていた。
「テメェ、覚悟は出来てるようだな。この場で殺してやる」
「うわぁ・・・、跡部狂暴やん。コワイなぁ・・・」
「・・・・」
は心の中で思った。
侑士も挑発しなきゃいいのに・・・ってか、なんで私なの!?
状況はをシカト状態で物事が進み始めた。
忍足は跡部との言い合いに集中しだして、を手放した。
そして、そのはというと、いつものように第3者のように眺めて出したのだ。
「、そろそろ止めてやれよ。俺らが部活でトバッチリ喰うんだぜ」
「岳人・・・そうねぇ・・・そろそろ止めよっか。ごめんね、いつも」
は謝ると、2人の間に立った。
すると、跡部・忍足共にみゆを見下ろす形で止まった。
「、邪魔すんなや。これは男の勝負や」
「そうだぜ。なんせがかかってるからな」
「・・・・・」
黙ったまま、は動きもしない。
それを不思議に思った2人は声をかけた。
「「?」」
うわぁダブった。
あからさまにイヤな顔の2人。
「・・・いいかげんにしなさいっ!!全く、2人とも子供じゃない!しかも私の気持ちを無視して・・・
私のドコがいいのか知らないけど、2人とも仲良くしてくれないなら大ッキライ!!!」
2人の頭には“大ッキライ”というフレーズが木霊している。
そのせいか、ショックを受けて静止状態だ。
「周りの迷惑も考えて欲しいよ。私は2人とも大事に思っているんだし。大好きなんだから・・・
キライにさせないで。いい??」
にとっては無意識なのだが、右に自然と首が傾き、上目遣い。
これに対して、折れない2人なわけがなく・・・
「・・・チッ!しょうがねぇな」
「しょうがないわな。に言われちゃ」
「よし!じゃあ仲良しの握手!!」
がお互いの手を取り、握手をさせるようにもっていく。
すると、素直に握手をしたと思えば、2人の顔が引きつっていて、握手している手は微かに震えている。
これは力を入れている証拠。
そして、離れたと思えば、お互い水道に走っていって、石鹸で手を洗っていた。
「もう!!景吾も侑士も知らない!!バーカ!!」
「なっ!?ちょっと待ってや!!」
「待て!!!!」
廊下を駆けては2人の手から離れていった。
どうせ、昼休みが終わると跡部とは同じクラスだから会うんだろうし、忍足も教室で待ってるんだろうな・・・
と思いつつ・・・
周りは「またかよ・・・」と思っていることに2人は気付かず。
仲良くなることは難しいかもしれない2人。
まぁ、これも微笑ましい氷帝学園なのでした。
「〜!好きだぜ!!」
「俺かて負けへんぐらい好きやでー!!」
教室から見えたに向かって叫ぶ2人の姿を全校生徒が目撃していたとか・・・