俺が探していたのはヴァンパイアだったのか・・・
〜VAMPIRE〜
ヴァンパイア
部屋に残された2人。
「大丈夫か?」
俺はいつものような微笑みでに問いかけた。
「うん。ところでなんで来たの?」
「ヴァンパイアが出たっちゅう話聞いて、に知らせよう思ってん。で、部屋の近くまで来たらすごい音しよったから」
マジでヴァンパイアとは思っとらんかったけど。
「で、なんでヴァンパイアがの部屋におったん?」
「怪我してたから手当てしてたの」
「はぁ!?ヴァンパイアに手当て?アホちゃうん」
俺の言葉には頬を膨らませる。
いつになっても子供のようなやっちゃ。
「アホじゃありません!!怪我してたんだから手当てするの当たり前でしょうが!!」
「らいいわ・・・」
「お褒めの言葉としていただいとくよ」
「じゃ、俺も帰るさかい。戸締りしっかりするんやで」
「言われなくても分かってる。侑士、何か隠してない?なんかいつもと違う・・・」
「気のせいや」
の頭をポンポンと2回叩くと、俺は部屋を後にした。
・・・君がヴァンパイアとは思っとらんかったで・・・
俺は親父に先に帰ると言い、の屋敷を出た。
目指すは湖。との思い出の場所。
親父は心配やったのか、銃を俺に手渡した。
銀の弾の入った銃を・・・
「親父も心配性やな・・・」
銃を眺めながら呟きながら俺は山を登った。
それから何十分経ったやろうか。
目の前には1度溺れた湖が広がっていた。
「懐かしいわ・・・!!ってヤバイやんか」
コウモリが自分の存在に気づき、襲ってこようとする。
昔もそうやった。
コウモリに襲われそうになり、とっさに逃げようとしたのだが、足を滑らせ湖に落ちた。
その時、助けてくれたのが・・・君やった。
ピーーーーーっ!!
笛の音?まるで口笛の音。
それと同時にコウモリ達は去っていった。
「何しているの?それとも、死にたいのかしら」
「・・・やな」
呟いた言葉に反応したのか、は俺の前に姿を見せた。
「もう2度と会うことはないとは思っていたけど」
「俺は会いたかったんやで」
「私は会いたくなかった・・・」
の目はどこまでもまっすぐで、俺自身吸い込まれてしまうんやないかドキドキした。
「助けてくれてありがと」
「いいのよ。あなた達も景吾を助けてくれたんだから。そのお返し」
「今回だけのことやない。昔のことも含めての感謝や」
「!!」
の目が一瞬見開かれた。
「覚えていたの・・・」
「当たり前やん。俺はずっと探しとったんやで」
「探していた?私を?」
「ずっと好きやった。親に聞いても元から俺はベッドで寝ていたと言われるし、夢やないかって・・・。
でも、あの笑顔だけは忘れることはなかったんや」
「でも、あなたが好きだと言った女はヴァンパイアなの」
「俺は気にしてへん。って言ったら嘘になるかもしれへん。でも、好きなんや。
この気持ちだけは嘘はつかへんねん」
俺の一生懸命の叫びにの目には涙が浮かんでいた。
伝わったんやろうか。
「ありがとう。私もずっとあなたのこと気になっていた。
でもね、侑士。ヴァンパイアと人間は超えてはならない人種なの」
「そんなん関係あらへん」
「出会ったことが間違いだったのかもね。景吾もあの後から呆然としているわ。
あの女のことが気になっているみたい。でも、超えられないの。無理なのよ。
早く帰ることお勧めするわ。そして、2度とココには来ないことね」
は踵を返し、進んでいく。
「俺は会いに来るで。のこと好きやから・・・」
最後まで俺の声だけが響いていた。
「ただいま」
「ああ。・・・、人間の匂いがする」
「また会ったのよ。あの男の子に」
「そうか・・・」
「なんでヴァンパイアなんだろう。なんで人種なんてあるんだろう・・・」
「どうした?」
滅多に弱音を吐かないが呟いた。
まさかとは思うが、その男に想いを寄せた?
俺も、という人間が気になる。
ヴァンパイアのない、光をもっている人間のせいか、惹かれるものがあるのかもしれない。
でも、それも短い想い。人間はすぐに果ててしまうから・・・
「私も景吾も人間を好きになったのかなぁ・・・」
「お前やっぱり!!」
「あの男の子、助けた子だった。小さいながらにも私の笑顔を引き出した。あの子・・・」
昔、1人の男の子を助けた話は聞いていた。
それから10年以上も経つ、でもはそいつのことを気にかけるように、よく湖へ出かけていた。
まさか、あいつがそうとはな・・・
「、種族を忘れるな。俺達はもう人間ではないのだから・・・」
そう。もう人間ではなくヴァンパイアなのだから・・・
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