「もうしわけありません。私、家に仕えております葉月ございます。この度、様の御迎えにまいりました」
「迎え・・・?」
☆跡継☆
私の目の前にいる40代の女性は葉月と名乗り、そして、私の前の家の家に使えていると言った。
「はい。家のご当主、いわゆる様の実の父上より様を連れてきて欲しいとのことでして」
「急になんでですか?」
「じつは、ご当主と奥様が事故に合われまして。。。」
「事故に?大丈夫なんですか?」
自分を捨てた親なのに、事故と聞いて心配する自分がいた。
「はい。今のところ体の方は落ち着いておられます。しかし、いつ容態が変わってもおかしくないとのお医者様から・・・」
衝撃を受けた。
例え、自分を見捨てた親だと言っても、産んでくれた親なのだから。
私は会いたいという衝動に刈られた。
「行きます。会わせてください」
「本当でございますか!?ありがとうございます」
葉月さんは深々と頭を下げて、私を車の止めているところまで案内してくれた。
車での移動中、葉月さんは色々と語ってくれた。
「ご当主は様を養子に出したことをとても悔やんでらしてました。奥様も。
その証拠としてお互いの部屋には様の幼少のお姿の写真が飾られています」
それなら連絡くれてもよかったじゃない・・・
「今でも様のピアノが聞きたいとおしゃっております」
ピアノかぁ・・・母が唯一誉めてくれたピアノ・・・
今となっては弾く回数は減ったな・・・
「そして最後に無理をさせすぎたと・・・」
私は何も言えなかった。
違う、全て本人に言うべきと思ったんだ。
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- 忍足病院 -
「忍足病院だったんですか・・・」
「はい。家の専門医師はここにいますからね」
「もしかして、医院長なんですか?」
「はい。様のお知り合いの忍足様のお父様でございます。
何度か様も受診されたでしょう?それは全て決まっていたんです。
様の専門医師は忍足様ですから。今までの受診料などは全て家が払っていました」
「なんで・・・」
「ご当主と奥様がそうしたいと」
「・・・・」
わからない。私には両親の考えていることがわからない・・・
私をすてたんじゃないの・・・?
私のこといらないんじゃないの?
考えながら歩いていると、病室についたようだ。
「ここでございます」
葉月さんが言った場所は忍足病院の病室の中では最上階の部屋だった。
コンコンッ
「葉月でございます」
「入って」
ガチャ・・
葉月さんは私を部屋へと促した。
まず目に入ったのは部屋の広さとベッドの上に横たわる大人2人の姿だった。
2人にはたくさんの管が通っていて、ものすごく痛々しく見えた。
正直、私は両親の顔なんて覚えていなかった。
そのせいか、2人を見て心の中で“ああ、両親なんだ”と思っていた。
相手は私を見るなり目を大きくさせた。
そして母と思われる方は涙を流し始め、父は相変わらず私を凝視している。
「?なの?」
母は私に手を伸ばしながら問いかけた。
私はただ頷くだけ。そのつもりが自然と足が向かっていた。
そして、一言。
「大丈夫?」
母は目を見開いたがすぐに応えてくれた。
「ええ。ありがとう。・・・なぜ泣いているの?」
「えっ!?」
私は頬に手を当てた。
そうすると手には水がつく感覚がした。
泣いている。私が?なんで?
両親に会えたから?
ううん。それだけじゃない。無事な姿を見れたからだ。
少しの間、自問自答していると、男の人の声がした。
「すまなかった・・・」
父だ。
「なにを謝ることがあるんですか?あなた方、両親は間違ったことをしたと私は思っていません」
「、お前を捨てたことをものすごく後悔した」
「・・・」
「許してもらおうと思ってはいない。ただ、見てのとおり、私達の先も長くないようだ。そこで、お前に跡をついで欲しい」
「私は今はもう家の娘です。ハイ、そうですか。と返事はできかねます」
「それもそうだな・・・少し考えてくれないか?」
「わかりました。少しの間、時間をください」
私がそう応えると父は少し頬を緩ませた。
「強くなったな」
「私も成長しましたから」
私は父に笑顔を見せながら言った。
その時、忍足先生が入ってきた。
「ちゃん、どうだね?両親と会えて」
「正直、複雑な心境ですね」
「そうか。侑士が俺の部屋に来ている」
「このことを知っていてですか?」
「いや、たまたまだ。小遣いでも貰いにきたんだろう。少し、話してきてくれないか?今から診察するから」
「わかりました。それでは、失礼します」
私は先生と両親にお辞儀をすると部屋を出て行った。
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「本当に強くなってましたね」
「ああ」
「は私達を見て涙を流してくれました。本当に優しい娘です」
「ああ。俺達は過ちを犯した。今回はその罰だろうな」
それを聞いていた侑士の父、先生は否定した。
「それは罰ではありませんよ。あなた方の罰とはちゃんと会うことなく死んで行くことじゃないですか?
でもあなた方はちゃんと会うことができた。違いますか?
正直にあなた方は急変してもおかしくないと私は申し上げた。跡継ぎのことなどがあるから私は申し上げたのです。
もし、私があなた方の家のことを知らなければ私は急変するかもしれないとは申し上げなかった。
罰が下るのならば、私はあなた方に申し上げてないはずだ。もしくは、即死しているはずです」
「「・・・・」」
「しゃしゃり出て申し訳ない」
「いえ、目が覚めました。今からでも遅くはないのかも知れない」
「ええ、何か、にしてあげれることを探してみましょう」
何か、が幸せになれることを・・・
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なぜだろう。あんなに両親のことを怯えていた私があんなに強気になれるなんて。
威厳のあった父がすごく弱弱しくみえた。
やっぱり管が通ってたり、寝てたせいなのかな・・・
私は、廊下にある案内図を見ながら院長室を探した。
そしたら、ちょうど上の最上階の階にあった。
エレベーターで1階昇って、廊下を歩いていく中、父の言葉を頭の中で繰り返していた。
“お前に跡をついで欲しい”
そればかりがリピートする。
私は跡を継ぐべきなのか・・・・
また涙が出てきた。今度は困惑の涙。
「私はどうすればいいのよ・・・」
考えていたら正面に《院長室》と書かれた部屋があった。
コンコン
「親父ならおらへんで」
「忍足侑士ぃ・・・」
ガチャ
涙声の私に驚いたのか、すぐに部屋から顔を出した忍足。
そして、驚いた顔をしていた。
「ッ!?どないしたん?跡部にでもいじめられたんか?」
「違う・・・ヒクッ」
「とりあえず、部屋入りぃ。つっても親父の部屋やけど」
部屋に促してくれた忍足の後についていく。
ソファに座り、忍足が紅茶を出してくれて、それを一口飲んだ。
それを見ていた忍足は笑顔だった。
「落ち着けたか?」
「うん・・ありがとう。あと、急にごめん」
「ええよ。そこまで気にしとらんし」
「それもそれでヒドイ・・・」
「嘘やって。俺でよかったら相談のるで?」
「ううん。大丈夫。相談してもどうなるってことじゃないし。ありがとう」
「そか。でも、聞いてもらえるだけでスッキリすることってあるんよ」
「そうだね。忍足には言ってなかったし、ついでに聞いてもらおうかな」
私は養子の件を含め、今回の跡継ぎの話をした。
「家といえば、跡部家にもそう劣らない名家やないか」
「そうなの?」
「当たり前やん。、そんなのも知らんのかい」
「政治には興味ないもん・・・」
「あんなぁ、家は跡部家とのライバル家と言っても過言でもないわ」
「・・・そうなんだ・・・」
ライバル家ということは、もし、跡を継げば跡部との結婚はありえないものとなる・・・
それはイヤだ。でも、そんな不純な動機で断りたくない。
どうすればいいの??
誰か、助けて・・・
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