“私立 黒主(くろす)学園”
ここは全寮制の名門校。
普通科・・・デイ・クラス
夜間部・・・ナイト・クラス
という変わった学校である。
本当の姿
〜急激に動き出す物語〜
そんな中、私はデイ・クラス。いわゆる普通科の3年に通っている。
そして、じつは理事長に拾われた1人でもある。
数年前からの記憶はうっすらとしかなく、正直何も覚えていない状態だ。
うっすらというのも、自分の正体のみ。でも、どこで産まれて、理事長と過ごすまでどうして過ごして来たのかは定かではない。
「はいはいはい!下がって!下がって!デイ・クラスの皆さんはもう門限ですから自分の寮に帰って!!」
ナイト・クラスの寮こと、『月の寮』の前ではデイ・クラスの生徒が群がっていた。
あたかも、アイドルを待つかのように。
そんな中、風紀委員として寮に戻すよう努めている私の義理の妹の「黒主 優姫」(くろす ゆうき)1年。
デイ・クラスとナイト・クラスは昼と夜を分けて1つの校舎を共有している。
クラスの入れ替わる夕方のこの時間はいつもちょっとした混乱状態になるのだ。
その風景を私は校舎の窓から覗いていた。
本当は私もあの仕事を担っている。でも、真面目に仕事はしてない。
優姫が本当に危険な時だけ行くことにしている。
優姫いわく、薄情な姉だと・・・
「優姫がんばってるわねぇ〜」
この時点で、薄情なのだ。
女生徒にブーブー言われている優姫。
でも、決してめげない。
そんな姿をは好んでいた。
ガシャン
月の寮の門が開きはじめる。
それと同時にざわめきが少しずつ大きくなっていく。
そう。アイドルをまっていると言っても過言ではない。
なんせ、ナイト・クラスは“エリートの集団”であり、そして“美形の集団”だからだ。
そして、数少ない人しか知らないナイト・クラスの正体。それはヴァンパイアだということ。
「出てきちゃったよ。私は退散させてもらおうかしら」
ナイト・クラスが出てきたとなると、騒ぎが大きくなって大惨事になるかと思われるが、
ナイト・クラスには玖蘭 枢(くらん かなめ)、クラス長で寮長がいるのだから。
正直私はあの人が苦手だ。
それは、あのなんでも見透かした顔。
本当に私の正体がバレないか心配でならなくなる。
外に背を向けた途端・・・
「大丈夫かい。優姫」
玖蘭枢の声。
私はおもいっきり振り返った。
すると、そこには後ろから倒されたであろう優姫の姿と、優姫に手を差し伸べる玖蘭枢の姿が。
「いつもご苦労様」
「・・・枢センパイ!」
優姫は玖蘭枢のことが好きだと1度だけきいたことがあった。
その時の私の心は複雑で・・・
なんにも言えなかったんだ。
玖蘭枢は優姫を助けてくれた命の恩人なのは知っている。
だから、優姫が惚れるのもわからなくはない。
でも、それは恋と私は認めたくなかった。
私は・・・あの人に助けてもらって恋をしたなんて思いたくなかったから。
見るたびによみがえる記憶。
・・・・玖蘭 枢・・・
あなたは一体、どれだけの人を助けてきたの?
優姫と・・・そして・・・私。
今日はちょっと体がだるい。
仮眠しようと私は理事長室へ向かった。
そして、ここから急激に物語が動き出した。
next→
拍手←押してくださると嬉しいですv