「・・・」
声をかけられ振り返ると、そこには玖蘭枢が立っていた。
本当の姿
〜私の正体と枢〜
今の私はボロボロで、玖蘭枢に対抗する気さえなかった。
「何か?玖蘭枢」
「なんで前のように呼んでくれないの?」
「枢って呼んで欲しい?」
「僕はずっとにそう呼んで欲しい。優姫が現れてからかな・・・が変わったのは。
全てを優姫に譲るようになった・・・」
「優姫は私の妹。欲しいものはあげるのは当たり前よ」
そう。優姫のためなら私は自分だって犠牲にできる。
人間として私をみてくれる唯一の家族になってくれるなら。
「・・・そう。それと、。君はいつまでデイ・クラスにいるつもり?」
「・・・どういうことかしら。私は人間なんだからデイ・クラスで当たり前でしょう」
「今日気付いたよ。今の君からはヴァンパイアの雰囲気が漂っている」
「・・・・」
「それと、さっき君は血臭を嗅ぎつけた。なんでかな?」
またやってしまった。
優姫のこととなると落ち着くことが出来ない私。
「・・・私は・・・人間よ。それ以外の何者でもない。玖蘭枢、あなただって私に牙がないのを見たことがあるでしょ」
「・・・そうだね。確かに君に牙はない。でも、もしかすると、錐生零のように純血種に咬まれている可能性がある」
「残念ね。それはありえないことだわ」
気付いてるようではないようだ。
そして、私のような存在がいることをまだ知らないのかもしれない。
“昼間は人間に。夜はヴァンパイアになってしまう私のような種族を・・・”
「?」
玖蘭枢と話していると、シャワーを浴び終えた零が立っていた。
「じゃあ僕は行くよ・・・。君からの言葉待っている。君はこちらに来るべき人なんだろうから」
「・・・・」
無言で私は玖蘭枢を見送った。
最後に見せた玖蘭枢の切なげな笑顔は私の鼓動を鳴らせるのには十分だった。
「、一体・・・どういうこと」
「零・・・部屋行こう。時期がきたら全て話すから。ねっ」
「・・・わかった」
覇気を失ってしまった零に諭すように話し、そのまま部屋へと連れて行った。
そして、部屋のベッドに零を座らせ、私は1つ1つ言葉を紡いだ。
「零。あなたがヴァンパイアを憎んでいるのはよく分かるわ。そして、ヴァンパイアになる自分も・・・
でもね、ヴァンパイアだけが悪いとは言えないのよ。人間にだって醜い者がいっぱいいる。
今まであなたの周りにはいい人がいすぎたのよ。幸せに囲まれすぎてるの。
今だってそう・・・父さんや優姫に囲まれている。あなたは人間だと信じれる場所がある。
だからあなたはココにいるんでしょう?私もココが好きよ。逃げ場になっているかもしれないけれど・・・
父さんや優姫はあなたを見捨てたりしない。それを分かって。・・・それじゃ零」
無言の零を私は置いて、部屋を後にした。
今の言葉の意味を零は理解してくれただろうか・・・
私はいつかあなたを突き放す時がくるかもしれない。
人を・・優姫を殺すのなら私はあなたのヴァンパイアになろう。
−次の日−
零はもちろん、優姫も風紀委員の仕事をすることもなく。
代わりに私がしていた。
こんなことは久しぶりで、いつもはいない私にデイ・クラスは騒ぎ立てていた。
「先輩よ」
「いつ見ても綺麗・・・」
「先輩にナイト・クラスの両方が1度に見れるなんて・・・」
一応、私はデイ・クラスの中から『ミス・デイ』と言われるのに選ばれたらしい。
ってか『ミス・デイ』って・・・
「皆さん、今日は風紀委員は私1人ですの。だから皆さんを抑えることなんてできなくて。
できれば見るのは構わないけれど、静かに・大人しく見てくださいね」
「「「「「「「はいっ!!」」」」」」」
この時、私の体はヴァンパイアと化す前触れの頭痛と呼吸困難が起こり始めていた。
しかし、月の寮の門が開いて玖蘭枢の登場とともに私の体の異変は静かなものへと変わり果てた。
“純血種”・・・私の体のやすらぎのもの・・・
「今日はだけなんだね」
「ええ・・・」
話しかけてきた玖蘭枢。
それを見ていたデイ・クラスの女子は雄たけびににも似た奇声を上げた。
「「「「「「きゃーーーーー」」」」」」
「先輩と玖蘭先輩のツーショットなんて滅多にないことだわ」
「あーもー!カメラ忘れたぁ〜」
「目よ。目にやきつけるのよ!!」
「にしても絵になるぅ〜」
「うるさいわ・・・」
「クス・・」
「笑わなくてもいいでしょ」
「は本当に騒がしいのは嫌いだよね」
「・・・だって」
「安眠できないから。でしょ」
昔からよく寝る私はうるさいことを嫌った。
それを知っている玖蘭枢。
助けてもらってから優姫が現れるまで幼馴染のように接していた私たちだから、知らないことはなかった。
next→
拍手←押してくださると嬉しいですv