「怒ってるんだからね、零っ!何も・・・話してくれなかったこと。
・・・どこに行っちゃうつもりだったの・・・」
「・・・・・始末をつけに―――」
「そんなんで誰も喜ばないわよ、零」
「姉っ!」
「やっ!優姫v昨日は2人もそろってサボってくれてありがと」
「「・・・・・」」
本当の姿
〜対のもの〜
・・・理事長室
コンコンッ
「理事長、お話が」
優姫が先頭きって開けた扉の向こう側にはナイト・クラスの制服を持った理事長の姿が。
ちなみに、デイ・クラスは黒。ナイト・クラスは白と色違いの制服になっている。
「おはようっ!いいところに来たねっ!見たまえっ!錐生君のためのナイト・クラスの制服だよ」
バチンッ!
見事にヒットした零のビンタ。
「出てく!」
「ちょっと零!理事長っっ!!わざわざ地雷ふまなくても!!」
「一応言わせてよ。僕理事長だから立場上さあっっ」
このコント続くの?と、私は呆れながら見ていた。
でも、続かないようで、父さんは頬を擦りながら零に優しく言葉をかける。
「だいぶ元気になったみたいだね。・・・さて優姫・・・言いたいことがあるんだろ」
「・・・はい。・・・零が今までとは同じではいられないことは・・・わかっています。
でも、私が零をナイト・クラスには行かせません。絶対に」
「優姫・・・。父さん分かってあげて」
「うん・・・まあもっともだよ。優姫の力を借りてでも錐生君は『ガーディアン』として必要だし」
私は1つのブレスレットをポケットから取り出し、父さんに渡した。
そのブレスレットは零の首にある刺青と同じ模様。
「・・いいのかい?」
「零と優姫のためだもの」
そのブレスレッドは自分の為に使おうと持っていたもの。
いつか壊れるかもしれない自分に怯えて。
そんなことはないと分かっていてもお守りのように持っていたもの。
父さんはそのブレスレットを優姫に手渡した。
「優姫。このブレスレットを着けなさい。錐生くん、指切って」
「・・・は?」
「切って君の血が要るんだよ」
「私が切ってあげようか?」
「いいっ!」
「チェッ!」
「姉、チェッ!って・・・」
いや、冗談なんだけどね。
これで本気だったらヤバイし・・・
零は不審がりながらも一筋の切れ目を指に入れた。
「よろしい」
そう言うと、父さんは零の手と優姫の腕を取り、さっきのブレスレットに零の血をたらした。
「・・・何を・・・」(優姫)
「した・・・?」(零)
「優姫に零って息ぴったりv」
「姉は知ってるの!?」
「当たり前でしょ」
さっきそのブレスレットを取り出したのだって私だし。
「零みたいなヴァンパイアが街に増えないのは何故だと思う?・・・抑える人物がいるからよ」
「これは昔ヴァンパイアハンター達が使った“ヴァンパイアを飼い慣らす”秘密の方法だよ。
『刺青』と『ブレスレット』で対をなす術式だ・・・」
父さんは説明をすると、実践に移して零の首にある刺青と優姫のつけたブレスレットを接触させる。
すると火花らしきものが跳ね、零を床へと押し付けた。
「・・・・・っ!!・・・・・??」
「ぜっ零!?」
「平気平気。動けなくさせただけだから」
「零、なんともない?」
私は零の顔を覗き込みながら言う。
すると、零は「ああ」と一言返すだけ。
「優姫・・・もしまた暴走錐生くんが誰かを咬もうとしたら―――
なんとしてでもブレスレットを錐生くんの首の紋章に触れさせて、彼を止めてあげなさい」
「・・・この刺青はヴァンパイア化を抑えるんじゃなかったのか」
「そうだよ。できることならそれで抑え続けられたらよかった――――だからこういう方法がある事までは
告げていなかったんだ。けれど君は完全にヴァンパイアの本能に目覚めて後戻りできなくなってしまったからね・・・」
「は知ってたみたいだな」
「・・ええ」
「いいかい?君の身を守るため・・・学園の日常を保つため、デイ・ナイト両クラスの生徒に
君の正体を知られてはいけない。これが君を今まで通りデイ・クラスに置くための条件だよ―――」
ずっとそれを聞いていた優姫は悲しそうな目をしていて、私は優姫の頭を軽く撫でた。
「姉・・・」
「後で久しぶりにゆっくり話そう?」
「うん・・」
父さんは優姫の心配そうな顔を見逃すはずもなく。
「大丈夫・・・無理に抵抗しなければじきに動けるよ」
そして、次は零へ。
「ごめん・・・本当はこんな事はしたくなかったんだけれど・・・」
「いいですよ。これで・・・」
零は私たちヴァンパイアの域に達してしまうのか。
私はこれからが戦いなのだと心に思った。
そんな決心をしていると、雰囲気を壊す人物が1人。
「・・・あとボクにもしてあげれることがある・・・」
「父さん?」
「どーしても血をがぶ飲みしたくなったら遠慮なくボクのを吸いたまえ」
ドゴッ!!
零の拳骨がヒット。
そりゃ、肌蹴ながらそんなこと言われたら気持ち悪くて殴るわ。
「なんだかセクハラを受けてる気分だ!!タブレットでいい!!いくぞ優姫、!」
「えっ」
「ハイハイ」
私はそのまま理事長室を1番目に後にした。
その次に零、優姫と出てくるかと思えば、出てきたのは優姫だけ。
「あれ?零は?」
「なんでも大事な用があるみたい」
「・・・そう」
「姉・・・」
優姫は悲しそうな顔で私を見つめた。
どうすればいいのかなぁ・・・そんな目で。
「優姫、あなたはどうしたい?」
「私は・・・零を止めてあげたい」
「なんだ。答えは出てるじゃない」
「えっ!?」
「優姫は零を止めたい。その為の道具は持っている。なら、止めてあげなさい」
「姉・・・」
「でも1つ。危険を伴うことを忘れないで。刺青があるのは首よ。そこにブレスレットを当てるのは困難に近いわ。
決して妥協してはダメ。止める時は心を鬼にしなさい。決して零だから・・・と意識してはダメ。
隙を見せたら優姫、あなたが咬まれるわよ」
「・・・・うん」
「それだけの覚悟があれば大丈夫。私はいつでも優姫の味方よ」
「ありがとう!姉大好きv」
そのまま優姫は廊下を駆けて行った。
その時、ついていけばよかったんだ・・・
後から後悔した。
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