私は優姫がいなくなって月の寮へと足を踏み入れた。

すると、そこで見たものは優姫と藍堂英。

優姫、月の寮に行っていたの!?











本当の姿



〜愛する者・大切な者〜










「・・・ああもう・・・ホント・・・・・・優姫ちゃんて枢様の何なのさ。
 ―――ねぇ・・・枢様のなに・・・?」





藍堂英から出てくる氷。

上級ヴァンパイアの特殊能力の一種。

私はそれを目にして、止めたかったが止めれなかった。

昼間の私はただの人間でしかなかったから。

だから、知っている玖蘭枢への部屋まで他の通路を使って走っていった。

すると、ちょうど目の前に玖蘭枢の姿が。





「枢っ!」


「っ!?・・・」




枢は嬉しかった。

に枢と久しぶりに呼ばれたことが。

そして、は気付いていなかった。

自分がそう呼んだことに。





「来て!!優姫がっ!!藍堂英にっ!!」





私は玖蘭枢の手を引っ張ったが、玖蘭枢にひっぱられる形になってしまった。

人間とヴァンパイアの体力の差。

こういう時、なんで自分は昼は人間なのかと、悔やむばかり。

そんなことを思っている間に玄関へと辿り着く。

玖蘭枢は玄関をあけようとするがそこで私が1度止めた。





「どうしたの?」


「私はいなかったことにして。玖蘭枢、あなたが1人助けたことにして。お願い」


「・・・・・わかった」





そして、私はもう大丈夫だろうと、月の寮を後にした。





?」


「零・・・」





歩いていて声をかけられ、振り向けば零がいた。





「ちょうどよかった。零、探してたから」


「?」


「優姫が今、月の寮にいるの。迎えに行ってくれない?」


「1人でかっ!?」


「大丈夫。玖蘭枢がいるから」


「・・・・わかった」























何故、は自分が助けたと言わないのだろうか。

その裏に見える答え、それは「優姫が僕を好いていてくれてるから」だろう。

誰でも好きな人に助けられたい。そんな願望を持っている。

だから、はそれを優姫に与えてやりたいのだと思う。


僕は玄関に手をかけ、扉を開いた。

そして、そのまま藍堂の元へ。





「そうだ・・・今すぐ枢様にお願いしなよ。「私の血を飲んで下さい」って」


「・・・!なに勝手に」


「恥ずかしいんだ・・・?」





優姫は藍堂によって凍らせかけられている。





「じゃあ僕の氷で凍らせて連れて行ってあげるよ・・・」


「藍堂先輩っ・・・いいかげんに」





自由のきく手を振り上げて、藍堂を叩こうとした手を僕は止めた。





「やめなさい優姫・・・」


「枢センパイ・・・」


「玖蘭寮長っ・・・」





そして、僕は優姫の変わりに藍堂の頬に一発。





「誰がこんなことを望んだ?」





冷たい声でそう言えば、藍堂は膝をつき謝る。





「いえ・・・出過ぎた真似を致しました。申し訳ございません枢様―――」


「下がれ」




藍堂は階段を上り、部屋へと帰っていった。





「・・・嫌なことを言われたみたいだね・・・ごめんね優姫」


「あっはい!いえあの・・・」





優姫が僕を慕ってくれるのは良く分かる。

自分のことを好いてくれることも。

そんな優姫の頬に手を添えて言葉をつむぐ。





「いいんだよ。優姫だけはそのままの優姫で。僕にかしずいてくるナイト・クラスの連中とは違う」


「・・・!」


「優姫には温かみがある。それで充分だ。・・・・さあもう時間だ。今度からは1人でこんな怖い所に来ちゃだめだよ」


「はい・・・」


「錐生くんでもいいから一緒に来てもらいなさい。優姫から奪ったものがある以上、彼はそれくらい役に立つべきだ」


「やめてください・・・。どうしてそんな言い方・・・」


「どうして・・・だって・・・?優姫・・・平気ではいられないんだよ。やっぱり・・・
 僕の大切な娘を他の奴らに咬まれてしまったんだから」





や僕じゃなく他のヤツに。


言葉と同時に玄関の扉が再度開かれた。

開いたのは錐生くん。

のことだ、迎えに錐生くんを差し向けてきたのだろう。





「零・・・」


「・・・お迎えが来たか・・・そろそろ昼の世界にお帰り。優姫・・・」






部屋へと戻ると廊下の途中で架院が立っていた。





「玖蘭寮長がそこまで彼女に執着する理由がかりません。・・・そもそも『玖蘭家』の最後の1人ともあろう方が
 錐生零なんていうヴァンパイアハンターの家の人間と一緒の所にいること自体みんな納得してないのに。
 貴方は『夜』の世界の・・・」


「優姫はね・・・世界でただ1人の・・・大切な娘だよ・・・」





そう。が大切にするのなら僕も大切にする。

が悲しむのは見たくないから。

が愛する者なら、優姫は大切な者。

でも、・・・君はいつまで僕から離れているの・・・



、君は一体何者?


その答えは僕の予想に反して、すぐに分かることになった。
















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