「、ナイト・クラスへ来ないかい?君ならやっていけるはず」
「せっかくのお誘いだけれど、お断りするわ。私は優姫を守らなければならないから」
「それなら錐生くんがいるだろ」
「その零が私は今は怖いのよ。血の味を覚えた零がね・・・じゃあありがとう、枢」
私は御礼を述べると、枢の部屋を後にした。
本当の姿
〜首筋の絆創膏〜
副クラス長でもある僕、一条拓麻が枢に用があって枢の部屋に向かっていると珍しい人を見た。
「あっ」
黒主。数日前、枢に連れて行かれた人物。
「『あっ』って何?」
「普通に驚くって、君が月の寮にいるなんて」
「そういえば、そうね」
「でも、違和感なかったよ。人間が歩いているなんてね」
「・・・私、あなた嫌い」
の中では「だって、勘がいいんだもの」と続いていた。
「それはありがとう」
「感謝される意味がわからないわ・・・」
「それより君のことだ、枢に用でも?」
「終わって出てきたのよ。今は部屋に行くことをオススメしないわね」
「ん〜・・でも行かなきゃいけないし。友達として?」
「そうね。唯一貴方が枢に1番近いものね」
その言葉を発した瞬間、僕は驚いた。
「ちゃん、枢をそう呼んでいたっけ?」
「気まぐれよ。気にしないで。それじゃ、月の寮はあまり体に馴染まないからもう出させてもらうわ。じゃあね」
ちゃんが去っていく後ろ姿を僕はずっと見ていた。
よく読めない子だ・・・と。
姿が見えなくなって枢の部屋へとまた足を進める。
そして、ノックをしてドアを開けると、そこにはソファに力なく横になっている枢のみ。
「ちゃんと会ったけど何かあったの?」
「・・・・」
無反応の枢。
「・・・君のことだからまた何か考え事をしてるんだろうね。ちゃんと眠りなよ・・・おやすみ・・・」
枢が黙っているということは1人になりたい時。
まぁ、枢が1人になりたがるのは珍しいことじゃない。ただ−−昨夜何かがあたんだとは思うけど・・・
・・・やめておくよ。詮索すると後が恐いし。なにより君が嫌がるだろうからね・・・
イヤなのに会ったかも・・・私。
にしても、ヴァンパイアハンターが夜刈だったなんて。
どうりであの恐怖感。2度と味わいたくないものだわ。
「姉!!」
目の前を走ってくるのは優姫。
その後を零が歩いてくる。
「優姫vいい子にしてた?」
「姉、ずっとどこに行ってたの?理事長に聞いても教えてくれないし」
「ちょっとしたヤボ用よ。にしても零、やつれたんじゃない?」
「・・・」
零の後、優姫に目をやった瞬間私は見てはいけないものを見た。
「優姫・・・コレは・・・?」
優姫の首筋にある絆創膏。
位置からして咬まれた跡・・・
優姫は咄嗟に首を押さえる。
それを見て私は零を見た。そして、零の頬を一発。
−パチンッ!!
「バカっ!!何してるのよっ!!」
零はバツの悪そうに斜め下を見つめている。
「姉、違う!!零だけが悪いんじゃない!!」
「ようするに優姫も大人しく咬まれたのね・・・そう・・・もういいわ」
「姉っ!!」
私は優姫の止める声も無視をし、その場を去った。
行く場所は理事長室。
恐らく、理事長は知らない。優姫は話そうとする子じゃないから。
「あら、様」
理事長室に向かう途中に会ったのは月の寮の使用人。
「めずらしいですね、あなたがこちらに来るなんて」
「はい。月の寮への来客で理事長にお知らせした方がいい方だったので」
「どなたなんですか?」
「一条麻遠様です」
「一条麻遠って・・・一翁?」
「はい。一条拓麻様のお爺様です」
一条麻遠といえば、別名“一翁”
『表の世界』ではありとあらゆる商取引でその名が絡まないことはないと言われるほどの企業“一条グループ”を育て、
『裏の世界』ではヴァンパイアの貴族の中でも筆頭の一族の長。
『元老院』に名を連ねる最古参のヴァンパイアの1人・・・
「分かったわ。私が理事長に伝えておきます」
「いいのですか?」
「ついでだし、いいですよ」
「では、お願いいたします」
礼をして、使用人は去っていった。
対照的に私は理事長室にまた向かった。
「月の寮に一条麻遠・・・一翁が来るみたい」
「そうかい。じゃあ風紀委員で迎えにいいてもらおうかな」
「3人で?」
「そうだね・・・だけ先に行ってもいいよ。優姫達には僕から言っておくから」
「わかったわ」
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