帰って正解なんだよね!?
私、間違ってないよね・・・?
m a l e - a t t i r e
景吾の家に1度帰ると、そこには奥様が待っていた。
「本当にいいのね?」
「はい。もう決めたことですから。・・・ワガママ言ってすみません」
「それはいいのよ。チケットの準備は整っているわ。いつでも出発できるから」
「はい。ありがとうございます」
部屋に戻って引き出しから便箋を取り出す。
机に座り、ペンで文字をつらねていく。もちろん、景吾に。
『景吾へ
急にいなくなってごめんなさい。怒ってるよね?
私、決めてたの。景吾に女ってバレたら出て行こうって。
だから、出て行くよ。今まで楽しかった。ありがとう
ことより』
書いている時、景吾に止めて欲しいって思ったりもした。
景吾は最後に私を好きとは言ってくれなかったけれど、それっぽいことを口にした。
だから、少しだけ期待したかったのかもしれない。でも、それはあくまで私の妄想の中だけのこと。
景吾は怒っているに違いない。そして、また黙っていなくなることに怒るんだ。
最低限のものだけカバンに詰めて、「奥様に出発する。」と内線で一言告げると部屋を見渡した。
今でも鮮明に思い出される景吾と過ごした時間。
楽しかった・・・でも、それも終わり。これからは景吾のいない世界でやっていくんだ。
涙が1つ、また1つ、と零れていった。
「お帰り。」
「ただいま。お母さん、お父さん。・・・英語教えてね」
「ええ・・・」
久しぶりに見る両親の顔。
何故かホッとして涙があふれ出した。
「。部屋で休むといいわ。ベッドとか最低限のものしかないけど」
「ありがとう」
私の部屋になる場所と案内されたところには机とベッドとクローゼットのみ。
本当に最低限のものしかない空間。
まるで私の心を表しているかのようだった。
------------------------------------------------------------------------
俺はアメリカに着くと、すぐに跡部グループが経営しているスポーツジムへ向かった。
そして、管理者を呼びという人が使ってないか尋ねると、案の定会員ということが分かったのだ。
社長の息子という立場を利用し、俺は宅の住所を手に入れた。
車を出させ、すぐに向かう。
着くと、そこはそれなりの豪邸が建っていた。
ここにがいる・・・
そう思うと、俺はすぐにでも駆け寄りたかった。
しかし、そこは冷静に玄関のインターホンを鳴らす。
『Who is it?』(どなたですか?)
「すみません。跡部景吾といいます。さんいらっしゃいますでしょうか?」
『・・・跡部さんですか。分かりました。どうぞ、中へ』
門が開かれ、玄関では恐らくの両親だろう2人が待っていた。
「はじめまして。跡部景吾といいます」
「の母です」
「父だ。まぁ、上がりなさい」
「失礼します」
促された部屋にもの姿はない。一体どこにいるのか・・・
「どうしてココに?」
まず口を開いたのはの父。選手だ。
「さんを追いかけてきました」
「を?何故?」
「好きだから離れたくなかったからです」
直球勝負。今は時間を掛けているときではない。
「すまないが、君にをやるつもりはない。は自分の意思で帰ってきたんだ」
「知っています。でも、自分はさんを簡単に手放すことができないんです。
引き止めることも出来なかった自分が今は悔しいから、ここまできました」
「には本気だと?」
「はい。さんは自分の全てを見て、受け止めてくれました。
なのに、自分は何も返してなければ、思いさえ伝えていません」
「・・・・は2階の一番奥の部屋だ」
「あなた」
「いかせてやれ。後はが決めることだ」
「ありがとうございますっ!!」
俺は深く頭を下げると、2階へと向かった。
next→