帰りたい。

ううん。帰ります。







☆帰還☆









からのメールが来てた。



“今日は寮の掃除をするので、遅くなります。ですので迎えは結構です・・・”



しかし、俺はそれをシカトするかのように放課後は部活にも出ず青学へ向かった。

この前からまだ誤解を訂正していなかったから。

と俺は婚約していたのは間違いではないことを・・・

青学の校門で待ち始めてどれくらい経っただろうか、救急車が青学に入って行った。

その時俺はイヤな予感がしたが、誰か知らない奴でも怪我をしたのだろうか?としか思わなかった。

しかし、その予想は外れていて・・・

救急車が出て行ってから何名かの女子が校門まで駆けてきた。

そして俺は聞きたくない事を聞いてしまった・・・




、大丈夫かな?』


と澪が付いて行ったけど。。。』


『今度はどうして?何があったの?』


『なんでも部屋に倒れてたらしいよ。原因は不明だって』




俺はその場から駆け出した。

さっきの救急車は忍足病院で間違いはない。


夢中だったせいか、車を呼ぶことさえも忘れていて夢中で走った。

忍足病院を目指して・・・






―――――――――――――――――――――――――――――――――――




光にあふれた空間に私は佇んでいた。

そこに誰かが歩いて来てるのが分かったから、私はそっちに視線を向けた。

逆光で相手の顔が見えない・・・私が誰?とたずねようとしたら向こうが訪ねてきた。





《ねえ、あなたは誰です?》

「私?私は


《私もです》

「私は


《ああ、あなたが。私はです》

・・・?」


《そう・・・》




どんどん相手の姿が見えてきて、私の前に現れたのは今の私と同じ姿をした自分。

私は驚いて2歩ほどあとずさってしまった。




「あなたは・・・ナニモノ?」

《私は私。そうね・・・あなたでもある》


「私でもある・・・?」

《そろそろ現実を見つめて》


「私は見つめているつもりよ」

《つもりなら誰でもできるわ。あなたは昔の私から逃げている。私も人のこと言えなかったけど。
 家の家族と笑っていたあなたの姿を写真で見た時、今のあなたが出てきそうだったのを無意識に拒否してしまったわ
 悔しかったのかも。幸せそうなあなたが》


「幸せそうな私・・・?待って、私があなたから逃げている?どういうこと?」

《現実には自分から。両親に怒られてばかりいた自分を忘れたいのよ。だから私と分離した。私は現実を受け止めたわ》


「分離って何?それに私は両親に怒られたことなんて滅多にない」

家ではね。家では?》


「あなたの家なんか知らないわよ!!」

《よく思い出してみて?あなたは家の養女のはずよ?》


「・・・・」

《本当の両親・・・家に捨てられないように頑張ったのは誰?》


「・・・・」

《あなたであり私でしょ?・・・ひとつに戻りましょう?でありに》


「・・・・」

さんを初めバレー部員も心配しているわ。そして、あなたの大好きな跡部景吾も・・・》


「っ!!!」



・・・澪・・・みんな・・・


・・・・景吾・・・・


帰りたい。あなたの元へ・・・



そう思った瞬間、が幼い頃の私の姿になって私に近づいてきた。そして私の手を取った。





〜私にとっても跡部君は大切な存在だったのかも。写真を見た途端あなたと一緒にならなきゃ・・・戻らなきゃって思ったの〜

〜ありがとう・・・私・・・〜

〜みんなにお礼と謝罪をお願い〜

〜うん。私もたくさん謝らなきゃ〜



―――――――――――――――――――――――――――――――――――




俺は病院に着くなりと澪とかいう奴を見つけた。




「おいっ!が運ばれたんだろっ!!」


「跡部君・・・」


「落ち着いて。あんた、確かの彼氏だったよね?」


「ああっ!それよりもはっ!!??」


「落ち着けっていってるでしょ!!はまだ寝てる。異常はどこにも見つけられていない。心配いらないって」




異常はない。そのことを聞いて俺は一息ついた。




「病室はどこだ?」


「205号室。まだ寝てるよ」


「そうか、サンキュ」


「待って跡部君っ、私も行く!!」




俺はの顔を見てから病室へ向かった。

病室には看護師もいて、俺達が入ってきたのに気がついた。




「ああ、ちょうどよかった。コレをさんの持ち物だったから返しにきたのよ。運ばれてくるまでずっとにぎってたわよ」




看護師は持っていた紙きれをにではなく、俺に渡してきた。

俺は大人しく受取り、その紙を広げて見て驚いた。

そこには ―俺とが遊園地で撮った写真― が・・・



これをはずっと握っていた。

どういうことだ?



俺は一瞬記憶が戻ったのではないかという淡い期待が頭をよぎったが、すぐに消え去った。

期待しても無駄だと心のどこかで思ったからだ。


看護師は病室を後にした。


の傍に行って俺はがいるにも関わらず寝ているの髪を梳いた。

髪は俺の指の間を流れるように通っていく。

こんなに近くにいるのに、遠く感じてしまう。


俺はの頭を抱きかかえながら囁いた・・・




。目あけてくれよ・・・俺ももう限界だ・・・」


「景吾にも限界があったんだ・・・」




の声がした・・・

俺は驚いての顔を見つめた。












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