逃がしはしねえぜ。










☆最期☆















いる?」


「あっ、お姉ちゃん」




私は、桃井。今、妹の部屋にいます。

何故かって?そんなの決まっている。

妹の根性直しに。




「跡部君との婚約破棄はかなり嫌がってるそうじゃない」


「当たり前です」


「そう。でも、結婚できても幸せにはなれないわよ。私はに幸せになって欲しいって思ってる」


「・・・」


「たぶん、一生にはちゃんを越えられないと思う。跡部君の中ではね」


「分かってます」


「ならなんで?」


「私も景吾様が好きなんです。だから、結婚したいんです」


「・・・・」


「でも、もう諦めます。悔しいけど、景吾様にはさんしか映ってなくて・・・」




妹は涙を浮かべながら話していた。

私は妹を抱き寄せて、一言。




「いつか、きっとのことを愛してくれる人がいるから」


「そしたら、私にも幸せくるかな?」


「うん。絶対幸せになれる」


「ありがとう。お姉ちゃん。私、景吾様との婚約を破棄する。コレ以上邪魔はしたくないから」







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あれから私は毎日病院へ足を運んだ。

もちろん部活が終わってから。

本当は面会時間は過ぎているんだけど、特別に許可をもらって。

やっぱり、お得意様(?)だから許可がとれたんだと思う。

それと、余命が残りわずかだからかな。。。父はあと2日。




コンコンッ



?」


「うん」


「入って」




ガチャ



最近では敬語も使ってない。

本当の親子が戻った。そんな感じだ。





、今日は大事な話があるの」


「大事な話?」


「そう。あなたの今後の話」


「それは重要な話ね」




私は苦笑いしながら話した。

それを見た母も苦笑いを返した。

父はもう意識も朦朧としていて見てて残酷だった。




「これからは、あなたの行動が社員全てに関わってくるわ。半年は指導役として秘書がつくけど、それ以降はあなた自身が全てを決めるの」


「分かってる」


「自覚があるようで良かったわ。それで、はライバル会社を知ってる?」


「・・・」




黙って頷いた。

跡部家と言うことが私にはできなかった・・・

まるで現実をつき付けられたような感覚におちいってしまうから。




「跡部家。あそこは強敵よ。決して屈しない会社。次期社長も相当できる子だと聞いてるわ。確か同じ歳のはずよ」


「知ってる」


「さすがね。そこまで知ってるとは。勉強でもしたの?」




首を横に振ったら母はじゃあなんで?って顔をしてた。




「跡部は氷帝で生徒会長とかテニス部部長とかで有名だったから」


「なるほどね。あなたも1年間だけ氷帝にいたんだったわね」


「うん。その時に知り合ったから」


「知り合った?話したりしたの?」


「・・・」




私は今までの景吾を頭の中で思い出していた。

すると涙がこぼれてきそうで、私は母に「ちょっとごめん」と言い、部屋を後にした。


ドアを閉めると、そのままドアの前に座りこんで涙をボロボロとこぼした。


ダメだ・・・私、弱すぎるよ・・・

こんなことで泣いてたらやっていけない。

強く自分を持たなきゃ・・・









急に呼ばれ、ハッと顔をあげた。

すると目の前にはと忍足の姿が。




「どうしてここに・・・」


「侑士から聞いたから」


「忍足のおしゃべり」


「ええやん。親友なんやろ?」


「・・・うん。でも、まだ言えなかった。言う勇気がなかった。実際まだ景吾にも言ってないけど」




私はポケットから景吾にもらった指輪を取りだし見つめた。

そして忍足の前に立ち、指輪を突き出した。




「コレ、景吾に渡して?」




しかし、忍足は受取らず、変わりに言葉を発した。




「服は変わりに返せるけど、こればっかりは無理や」




服というのは、まだ景吾と付き合う前に景吾から借りた服を忍足に返してもらったもののことだ。




「おねがい、コレ以上私が持ってる資格ないよ・・・」


「跡部は今、のことに一生懸命なんだよ!?」


「私のことって?」


「跡部はね、親が決めた婚約者がいるの。でも、それを拒否してと結婚するんだ!って言って説得してるらしいよ」




それを聞いてさっきまで止まってた涙がまた溢れてきた。




「早く言わなきゃね・・・もう結婚できないって・・・」


「そうやないやろ!!」




怒鳴った忍足を初めて見た。

驚いた私は忍足を凝視してしまった。




の気持ちはたったそんだけのもんやったん!?」


「違う!!でもっ!!」




反射的に私も怒鳴る形になった。




「でもなんや。継ぐから結婚できん思ってるん?」


「だってそうじゃない!と跡部はライバル会社なのよっ!どうしようもできないじゃない!!」




私は言い終えた後、ハッとして静かに「ごめん・・・もう今日は帰って・・・」と言った。

すると、忍足は溜息をつきながら膝を引き帰していった。



どうすることもできないじゃない。。。




3人の会話をの母がベッドの上で静かに聞いていたことをは知らなかった。






―――――――――――――――――――――――――――――――――――




最近、とも連絡とってねえな。

お互い忙しかったからか・・・


そう思い、跡部は携帯を手に取りの番号を画面に出しボタンを押した。


は景吾からの連絡に驚くと同時に戸惑ってしまっていた。

恐る恐る通話ボタンを押し、携帯を耳に当てる。




か?俺だ」


『うん』


「最近忙しくてな。連絡取れなかった。わりぃ」


『ううん。全然気にしてないよ』


「そうか。どうした?元気ねえな」


『そうかな。あっそうだ!景吾にちょうど話があったんだ』


「話?なんだ?めずらしい」


『そう言わず聞いてよ。あのね、・・・私達別れよう?』


「はっ!?冗談か?もっとマシな冗談言えよな」




跡部は心の中ではどうしてか分かっていてもあえて知らない振りをした。




『冗談じゃないよ。私、景吾のこと嫌いになちゃった・・・』




跡継ぎがあるから・・・と言うかと思っていた。

それなのにはとても冷たい声で“嫌いになった”と言った。

この言葉を聞いて俺はどん底に落された気分になった。




『もう、飽きちゃったんだよ。景吾、親の決めた婚約者いるんでしょ?知ってるよ。
 私も跡部のライバル会社であるを継ぐし、もうお互いお遊びはここまでね。それじゃ』




ツーツーツー



跡部の耳には無機質な音だけが聞えた。


は俺を諦めさせる為に言ったのか!?

でも、嫌われてなんになる。


俺は放心状態のようになった。

・・・一体何を考えているんだ・・・







この時程、寮が1人部屋でよかったと思うことはなかった。

これで最期だから・・・と私は景吾の声を心の奥に録音した。写真を片手に。

涙をこらえて言った言葉。




“嫌い”“あきた”



もうコレ以上もない程景吾に嫌われただろう。

それでいいんだ。

将来、ライバル同士。変な感情があってはやりにくい。

逆に憎み合ってる方がやりやすいんだから。本気になれるんだから。














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