走った。

こんなに焦る自分は久しぶりかもしれない。








☆heart who is perplexed〜困惑する心〜☆








私は足を止め、一呼吸ついた。

目の前には跡部君のクラス。


深呼吸をして勢いよくドアをあける。

すると、注目を浴びるのは当たり前で。

でも私にとってどうでもよかった。

今はとにかく跡部君を探すのが先決だから。




見つけた!!




跡部君は元気なさそうに、不機嫌そうに机に座っていた。

私は正直怖かったけど、1歩1歩と足を進めた。

足が重い。鉛の重りでもついてるかのよう。


怖い。もし、跡部君が景吾だったら?

どう接すればいい?

どんな顔で会えばいい?


そう思うと、足が止まってしまった。



駄目だ。渡せない。

景吾なんだろうけど、合わせる顔がない。



私のペンダントを握り締める手が一層強くなった。

そして、そのまま引き返してしまった。





教室に戻ると、と忍足君が楽しそうに話している。

正確にはつっこみ合ってる。




「ただいま」




心配そうに見るに笑顔で返す。




「跡部君に返そうと思ったけどいなかった。忍足君、返しといてもらえるかな?」

「いいで。じゃあ預かるな」

「うん。お願いね」












「なんで嘘ついたん?」

「えっ?」

の顔見れば一発や。勇気でなかったんか?」

「・・・・うん。だらしないよね〜私」




苦笑いの私には寂しそうな顔をする。




、提案あるんやけど」

「何?」

「今度の新曲のカップリング曲。まだレコーディングしとらんやろ?」

「うん」

「それをいつもが唄っとるやつにせえへん?」




私がいつも歌ってる曲。

それは、景吾との思い出の曲。




「もちろんカバーになるんやけど。この曲だったら景吾も気づいてくれるやろ。嫌?」

「・・・ううん。わかった。最後に掛ける。これで景吾が現れなかったら諦めるよ」




そして今日の放課後からその歌の練習を急遽行うことになった。



















放課後、部室の前で忍足とちゅうど会った。




「跡部、コレ届けもんや」




そう言った忍足の手の上には俺の探していたペンダントが1つ。




「なんでテメェが持ってる」

ちゃんとっておったやん」

「・・・ああ」

「2人が拾ってくれててん」

「なんで俺のだと?」

「あー。俺が言ったんや。跡部のやって。あっ!でも、やっぱりとかゆうとったな・・・」




やっぱり?

なら何故言ってこない。

やはり、もう俺を必要としていないのか・・・




「2人は部活何してる?」

「合唱部やで。でも、今日は早くに帰ってったで」




クソッ。

真実を確かめてやろうと思ったが、いないんじゃ話にならねえ。

ふと思っていると、音楽が聞こえてきた。




『ねえ 君はどこにいるの?

 ねえ 君のぬくもりは?

 あがいても あがいても 見当たらない

 深い闇が私を支配していくの



 君がくれた物忘れない
 


 いつでも1人じゃない 必ず傍にいてくれた

 これからも ずっと・・・ そう思ってたのに



 shine  求めてた

 shine  探してた

 見つけたいよ 君の光 光輝(こうき)を・・・』



「Secretやな」




音の音源は部室から聞こえる。

誰か聞いてるんだろう。

にしても気になるのはこの声だ。

の声に聞こえて仕方がない。


この声はなのか?

なら、あいつは・・・このペンダントの存在を知っていた忍足のクラスメイトのは・・・?



俺はこの時、同一人物だとは全く考えもしてなかった。












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