この世にはヴァンパイアと人間。
2つの種族が生きていた。
しかし、ヴァンパイアは人間に追放され、姿を現すことはごく稀なこと。
そんな中4人の男女は出会った。
〜VAMPIRE〜
ヴァンパイア
「侑士、何してるの?」
「なんや、やん。こんなとこ来てヴァンパイアに連れて行かれても知らんで」
「侑士は本当にいると思ってんの?」
「さあ。どうやろ」
忍足侑士。それは私、の幼馴染。
今日は、貴族同士でのパーティーがあったため、と侑士は出席をしていた。
といっても、今回の会場はの家。
そして、パーティー開始から1時間ぐらいして侑士はつまらなくなり、バルコニーからシャンパンを片手に外を眺めていた。
「にしても、暇ぁ〜」
「、ホンマに貴族とは思われへん。変わったやつや」
「侑士に言われたくない。裏表の激しいヤツ」
「そうでないと、この世の中渡っていけへんで」
本当に侑士は裏表が激しい。
たしかに、貴族は裏表がなければやっていけないけど、私は嫌だなぁ・・・というか出来ない。
「おっと。親父が呼んどる。ちょっと行ってくるわ」
「はーい」
侑士がバルコニーから室内にはいる背を目で追った。
すると、後ろからガサッと音が。
まるで、何か落下したような音。
「誰?出てきなさい!」
私の声が響くが、誰もでてこない。
でも、確かに音がした。
元々好奇心の強いは急いでその庭へ出る。
バルコニーから室内に入り、玄関を出て、庭へという順序を経て。
「誰かいるの?出てきて」
恐る恐る庭木の間を通る。
すると、目の前に倒れている人物が1人。
嘘!?死体!?
一瞬頭にそんなことがよぎった。
背中に冷や汗が流れる。
1歩1歩踏みしめながら、倒れている人物へと近づく。
顔が見えた途端私は驚いた。
「綺麗・・・」
右目の下にホクロが1つ。
この暗闇が似合う。そんな人。
「うっ・・・」
倒れていた男の人が目を覚ました。そう思ったが、目は開かない。
顔をしかめるばかり。どこか痛いのだろうか?
「ちょっと、どこか痛むの?ねぇ」
『こっちに落ちたぞ!』
『気をつけろ!噛み付かれたら終わりだ!』
大人の声がする。それも複数。
何かをしとめたのだろうか。
「くっ・・・もうダメか・・・」
周りを見渡していた私は、声が近くでして驚いた。
なんと、男の人が目をさましたのだ。
「大丈夫?どこか怪我してるんじゃ・・・」
「貴様人間だな」
「当たり前じゃない。それより怪我どこ?」
「俺は吸血鬼だぜ。お前らがヴァンパイアと呼んでいる・・・」
ヴァンパイア・・・本当にいたの?
ううん。いる、ここに。怪我をして。
「声したろ?俺を探している」
「立てる?ムリなら掴まって」
「お前聞いてるのか?!」
無理矢理にでも男の人を立たせた。
そして、警備や大人の目を逃れながら1つの部屋を目指した。
私の部屋を・・・
電気のついている私の部屋につくと、怪我していることが一目瞭然だった。
肩・足から流れている血。
男の人はつらそうな顔をしている。なんとなく顔も青白い。
「どうしよう・・・まずは傷口を綺麗にしなきゃ・・・えっと・・・
そうだ!!お風呂!!えっと、そこの扉開けるとお風呂ですから。まず、入って」
「お前、分かってんのか?」
「話は後!!ほら、入ってください」
男はお風呂場に押し込まれる形となる。
そして、いっときするとシャワーの音。
よかった。ちゃんと入ってくれた。
はそう思いながら、部屋についている電話を手にとって話はじめる。
「です。ちょっと怪我したので、救急箱を持ってきてもらえません?」
『それは大変ですわ!今お医者様をお呼びいたします』
「そこまでしなくていいわ。とにかく救急箱を。それと、このことは他言無用で。いいですね?」
『・・・かしこまりました。すぐにお持ちします』
それから5分もしないうちに救急箱が届いた。
「ありがとう。無茶を言ってごめんなさい」
「いえ。でも、お嬢様どこをお怪我されたんですか?一目でいいので見せてください」
「ちょっとしたかすり傷よ。たいしたことないわ。心配してくれるなんて優しいのね」
「そんな。お嬢様にもしものことがあったら・・・」
「本当にありがとう。仕事に戻っていいわ」
「はい・・・」
中々納得のいかないような使用人だったが、はなんとか部屋から離すことができた。
そして、ちょうどさっきの男の人がお風呂からあがった。
「ごめんなさいね、あなたぐらいだと、ガウンしかなくて・・・」
「いや」
「じゃあ怪我見せてくれる?」
そう言っては男の人を座らせて、肩を肌蹴させ傷の手当てをする。
「これ、何で打たれたの?」
「銃だ・・・銀の弾のな・・・」
「銀の弾・・・」
銀の弾。それはヴァンパイアに使われるという弾。
「私じゃ弾取り出せない・・・ごめんなさい」
「弾はもう出ている。自分で取り出すことができるからな」
「そうなんですか!?すごい!!」
静かなヴァンパイアと違い、ははしゃいでいる。
今までの常識とは桁外れなことを聞いたから。
コンコンッ
部屋の扉がノックされた。
「様。ヴァンパイアが出現したそうです。異変はございませんか?」
警備の人間だ。ヴァンパイアを探し回っているのだろう。
「大丈夫です」
「一応、お部屋を点検させて頂いてもよろしいでしょうか?」
扉越しにされる会話。
ヴァンパイアはこの時、もうムリか・・・と諦めていた。
しかし、の言葉はヴァンパイアの予想を裏切るもので。
「申し訳ありませんが、お断りします。今私、召し物を召してませんの」
「すっすみません!」
「いいえ。では、警備の方これからも頑張ってください」
ヴァンパイアを庇ったのだ。
廊下の足音が遠ざかる。
「もう大丈夫です」
「何故だ。何故俺を突き出さない」
は怪我の治療を進めながら話を続ける。
「突き出して何かいいことはあるのでしょうか?」
「俺はヴァンパイアだぞ・・・」
「それが?ヴァンパイアであることが罪なのですか?それは違うはずです。そうだ!名前教えてください」
「名前・・・?」
「ええ!名前です。私はといいます」
「か・・・俺は景吾だ」
「景吾様ですね。・・・よしっ!終わりました」
の手当てもあり、傷口には包帯が巻かれていた。
「なんで、俺を助けた?」
「怪我人をほっておけるわけありませんから」
「変わったヤツだな。お前」
「よく言われます」
はさっき、侑士に言われたことを思い出して笑った。
2人で話していた時に窓が思いっきり開いた。
強風がの部屋へと流れ込む。
「そこの女、景吾から離れな」
窓のふちに立っていたのは綺麗な女の人だった。
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