どんなに血を吸っても、喉の渇きは潤せない。
俺は・・・どうなってしまった・・・?
私は・・・どうなってしまった・・・?
〜VAMPIRE〜
ヴァンパイア
「景吾・・・私、会いたい・・・」
洋書に目を通してた景吾は驚いた顔を見せた。
・・・会いたい・・・
そう私は自然と零していたのだから。
「ごめんっ!気にしないで。私、どうかしてたみたいだ・・・」
「・・・」
そんな目で見ないで。
そんな痛々しいモノを見るような目で・・・
景吾だって同じでしょ。
私たちはそこらへんの双子と違う。
何年もたった2人だけで過ごしてきたんだよ。
景吾の気持ちぐらい分かるにきまっている。
「会いに行くか?」
「えっ・・・」
一瞬景吾の言葉に驚きを隠せなかった。
景吾もつらそうな笑顔を私に見せた。
「の願いを聞かない俺じゃない」
「それは・・・」
「もうを不幸にさせたくないんだ」
「景吾、もしかしてまだ・・・」
まだ私がヴァンパイアになったことで罪悪感を背負っているの?
そうなの?景吾。。。あなたは何年苦しんでるの?
私の知らないところでまだ苦しんでいたの?
ごめんね、景吾。
景吾と私は夜にしか行動を起こせない。
その為、侑士に会いに向かったのは夜の出来事だった。
見るだけ。見て満足するの。
私の心に住み着くその人をみるだけ・・・そう、見るだけ。
私と景吾は夜の街を隠れ歩く。
飛ぶことも考えたが、歩いたほうが安全なこともある。
「ここか」
「うん」
家の前で一旦止まり、一呼吸をおいて飛び、侑士の部屋を覗いた。
侑士の姿は丁度死角にいるのか見えない。
『侑士、手は大丈夫?』
聞こえてきたのは女の声。
一瞬めまいがしたが、その声の持ち主が分かると安心した自分がいた。
それは、という人物だった。
景吾は下で待っている。
景吾を呼べば、景吾は喜ぶだろうか。
あの女を見れることを・・・
「景吾、もいる」
“”その言葉に景吾は反応した。
「そうか」それだけ言うと、景吾はさっきのように戻った。
会いたくない。というわけはないはずだ。
景吾は忘れようとしているのだろうか。
強いな、景吾は・・・
『もう傷も見えへん。安心しぃ』
『そろそろ行動起こす?』
『そやな・・・』
『最近の侑士、演じきれてない。我慢できないぐらいつらいんでしょ?』
『・・・俺、に会いたいねん。どんなことをしても・・・』
侑士は確かに私に会いたいと、そう言った・・・
何故だろう。嬉しい反面つらい。
心のどこかで種族の違いには逆らえないと分かっているから?
『さん、会えないせいで怪我したって知ったら怒るかもね』
『あれは無意識や。しょうがないやん』
私に会えないせいで怪我した・・?
そう聞いた途端、私は行動を起こしていた。
そして、それを景吾は下から見ていた。
バンッ!!
私は思いっきり窓を開けた。
その音にさすがに2人は気づいて、視線を私へと投げかけた。
「なんでや・・・なんでここに・・・」
「さんっ!?」
「こんばんは。2人とも元気そうね」
驚いた顔を隠せない2人。
「よかった・・・侑士はずっとあなたに会いたがって「迷惑なのよっ!」
「「!!」」
違う。迷惑なんかじゃない。
「いい加減にしてほしい。こんなことになるなら、助けるんじゃなかった・・・」
ううん。助けてよかったと思ってる。
あなたと出会えたこと心から感謝してる。
「嘘やろ・・・なぁ。・・・嘘やってゆってや」
「本当よ」
嘘よ。そう叫びたい、でも、それであなたに傷を負わせるぐらいなら、どうせ会うことも禁じられた私たちなんだから。
「・・・・」
言葉の出ない侑士。
ごめん、本当は自分の気持ちにはとっくに気づいてた。
私、侑士が好き、会いたかった。
でも、それは重荷になるなら私はいなくなるから。
あなたの嫌いなモノになるから。
「、そろそろ」
「景吾さんっ!!」
私を呼びに来たのはもちろん景吾で。
それにいち早く反応したのは、だった。
「私、何度も館に行ったんです!なんでか私にも分かりませんっ。でも、あなたのこと考えると鼓動が早くなって。
どこかであなたを求めている自分がいるんですっ」
その時、景吾の頭の中に1人の人物と重なった。
「なんでか私にも分かりませんっ。でも、景吾のこと考えると鼓動が早くなって。
どこかで景吾を求めている自分がいるんですっ。」
「雫・・・」
「えっ!?」
そう。雫が景吾に告白した時と同じ。
まるで、それを再現しているかのような錯覚に陥った。
その時、私は景吾の様子に気づき、言葉を放った。
「いい?考えてごらん。あなた達なんて儚い人生じゃない。それに比べて私達は永遠。そもそもの意味分かるでしょう?」
「人間とヴァンパイアの違い・・・って言いたいんやな」
「そういうことだ。分かるだろう。俺様とお前は違う」
「違う・・・?」
「そうよ、いい加減気づいたら?」
の顔が絶望へと導かれていくのがよく分かる。
景吾も種族を意識し始めて、立ち直れたみたいだ。
「残念やな。俺は、そない諦めの早い男やないんや」
「テメェも諦めの悪い・・・」
本当。そこで諦めてもらわないと、決心が鈍ってしまう。
お願い、侑士、もし私を放したくないというのなら、しがみついて。
私の心にしがみついて・・・
もし、侑士・・・あなたが諦めたとき、私もあきらめる。
「そや。俺はが好きなんや。だから諦めが悪い。の本音聞かせてや。
人間やヴァンパイアなんて関係なく、の本音が聞きたいんや!!」
私の本音。。。でも、それを吐くことは景吾への裏切りとなる。
私は迷った・・・
「さっき、あなた方は私たちと違うと言った。でも、それは違う。私やあなたには心がある。
例え、寿命が違っていても同じ感情を持った心がある!!」
「綺麗事だな」
「綺麗事と言われてもかまわない。でも、人間同士だって違う人は違う。それでも、心があるから判り合えるんです」
「・・・・」
「あなた達だって、ずっと生きてきたなら人間がどういうものか分かっているはずです」
人間がどういうものか、か・・・
「そんなの産まれた時からしっている」
「えっ!?」
「私達だって「っ!!」元は人間なんだからっ!!」
景吾が一瞬止めに入ったが私の声帯は音を発した。
「人間・・・」
「そうよ。ヴァンパイアの血を口にした時から私と景吾はヴァンパイアへと変わった。
あの日がなければ、私達だって幸せな日々を送って、死んでいたわ!」
そう叫んだ後だった。
私は誰かに抱き寄せられていて、人の温もりをかんじていた。
そして、頬には一筋の涙が・・・
「つらかったんやな・・・もつらい思い一杯したんやな。ごめんな、気づいてやることできんかった・・・
俺をヴァンパイアにしてくれへんか?そしたら、の傍におられる。ずっと支えてやれるんや」
抱き寄せられた頭の上から声がしたのは侑士の声だった。
そして、自分をヴァンパイアにして欲しいと、私の傍にいたいと言ってくれたのだ。
「ありがとう。でも、それはできない。侑士をヴァンパイアにはできない・・・」
「なんでやっ!!」
「ヴァンパイアになること、それは自分の歴史を抹消されるの。みんなから忘れられるの。そんなつらい思いしてほしくない」
「それでも、俺はっ!」
「好きだから、侑士が好きだから、つらい思いしてほしくないの。ごめん、侑士・・・」
「そやったら、これから館に会いに行ったりしてかまわへんか?」
私は1つコクンと頷いた。
「いつもの湖でなら・・・」
「かまわへん。俺、に会わなぁ気ぃおかしくなりそうやねん」
景吾はただ、その様子を眺めていた。
そして、に目をやったときに驚いた・・・
首筋についている痣・・・それは以前にも見た痣だった。
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