『私ね、生まれた時から不思議な痣があるの』
そう言って雫は俺に首筋を見せた。
そこには、まるでコウモリのような形をした1つの痣があったんだ・・・
〜VAMPIRE〜
ヴァンパイア
「お前・・・まさか・・・」
俺は自分の目を疑った。
まるで、雫の生まれ変わりを知らせるような痣に。
も俺の目線に気づいたのか、首を急いで覆う。
そして、苦笑いをしながら話し始めた。
「やっぱり気持ち悪いですか?私自身もそう思います。この痣は私に不幸を呼ぶんです。
産まれた頃からついていて、ヴァンパイアだと苛められたことも、蔑まされたこともありました。
痛い思いをして、親はこの痣を消そうとしました。でも、消えることのない痣なのです」
はその痣が嫌いなのか、首を思いっきり掴む。
「この痣さえなければと、何度願ったことか・・・」
掴む首筋が白く変色しはじめた。
血流が途絶えている証拠だろう。
それを見て、俺は自然とに近づき、そっと手を添えたんだ。
「俺は好きだ。。。その痣こそが・・・」
「景吾さん?」
無意識だったのだろう。いつの間にかを抱きしめていて、頬には1粒の水が伝っていた。
≪愛しい≫と感じた。≪離れたくない≫と感じた。
でもそれは“”よりも“雫”への思いが強かったのかもしれない。
俺はどちらを思っていたのか・・・
は以外の人に重ねていると感じ取ったのかは分からない。
でも、諦めずに俺に問いかけた。
「これからも、私は景吾さんに会いたいんです」
「ああ」
「館に行く許可を下さい」
「いいのか・・・お前を不幸にするかもしれない」
「私の幸せは今は、景吾さんに会えることですから」
あれから、私と景吾は館へと帰った。
侑士は優しくて、帰りの通路を教えてくれた。
は少し苦笑いをしていたのを覚えている。
なんでかは正直わからない。
ただ、景吾は雫とを重ねているのは私は気付いていたんだ・・・
「景吾、いいの?あれはだ。雫じゃない」
「わかっている!!でも、たぶんは雫の生まれ変わりなんだ・・・」
「生まれ変わりでも、雫じゃない!!」
「、悪いが、今回は譲れねぇ・・・あいつを手放したくなんだ」
「・・・わかった。景吾がそう言うなら私は何も言わない」
「わりぃ・・・」
それから、私はいつもの湖へと足を運んだ。
「様!!・・・人間に会われていたのですか?」
「やはり、匂いがするか?」
「はい。少々ながら・・・」
そうか。と苦笑いすると、用事を話しはじめる。
「前まで来ていた男女2人の人間がいただろう?」
「はい」
「これからは襲わず通してやってほしい」
「しかしっ!」
当然、コウモリの群れからはガヤガヤとざわめきがおこる。
しかし、私は大きな声で叫んだ。
「いいな?」
まるで職権乱用というべき態度で口にした。
すると、コウモリは渋々「はい」と返事。
コウモリは私たちには逆らえない。
何故かは分からないけれど・・・
「よかったね。侑士」
「もやん」
「うん!」
「これで抜け出しても大丈夫そうや」
私は卑怯だ・・・
景吾さんが誰かを重ねて見ていたのは分かっていた。
でも、私は景吾さんに会いたくて、弱っている時に館への許可をもらったんだ・・・
侑士とは違う。
あの2人はしっかりと愛し合っている、それに比べて私は・・・
「いつ頃決行するん?」
「んー・・・侑士が決めていいよ。私はいつでもOKv」
「了解!じゃあ今日は帰るわ。また来るさかい」
「うん。おやすみ」
「いい子で寝るんやで!?」
「バカにしないでよっ!」
いつもの会話で今日も幕をとじた。
また会えると信じながら4人は眠りへとついた。
next→