婚約者・・・それは真実なのですか?

それとも偽りなのですか?









☆願望☆










サエが来た次の日も学校があるのは当然で。

そして必ず帰りには跡部さんがいた。




「今日もお待たせして申し訳ありません」


「いや、かまわねえ。学校は慣れたか?」


「はい。みなさん良くして下さって。楽しい限りです」


「そうか」




今日も無言で歩く。

でも私の気持ちは最高潮。

婚約者と歩いているから。

堂々と歩くことができるから。




家に近くなると、人が一人立っていた。

遠くてよく見えなかったが、近づくにつれて顔がはっきりしてきた。




「サエっ!?」


、お帰り」


「只今帰りました」


「跡部君と一緒なんだね!?」


「はい。毎日送ってもらってるんです」


「そう。だから昨日もの家の近くですれ違ったんだ・・・」




サエと私の会話を静かに聞いていた跡部君は眉間にシワをよせた。




「どういう関係だ?」


と俺?」


「ソレ以外に何があるんだよ?佐伯」




睨みながら言う跡部さんの問いにサエは笑顔で答える。




「それもそうだ。とは今は友達。そういう跡部君はとどういう関係?」




佐伯の「今は」という部分に引っ掛かりを感じた跡部。

そして、サエの問いにはが答えた。




「跡部さんとの関係は昨日サエに話しましたよね?」


「うん、聞いた。婚約者だって?」


「・・・・」




黙り込む跡部さん。

そして、何も言わない跡部さんの変わりにサエが言葉を続ける。




、辛いかもしれないけどそれは嘘だよ」


「えっ!?」


「跡部君とは婚約なんかしてない。真っ赤な嘘ということ・・・」


「そんな!?昨日、確かに跡部さんから聞きました!!」


「だから、ソレが嘘ということ!?」




私は跡部さんを見た。

でも、跡部さんはサエを睨んだまま何も言わない・・・

どうして「嘘じゃない」って否定してくれないの?

そして、私にサエは確信しなければならない一言を放った。




「これはに確認したこと」




私は頭が真っ白になった。

その場にずっといることは出来ずにサエの横を通りすぎて家に駆け込んだ。

後ろではサエと跡部さんが私の名前を叫んでいた・・・





―――――――――――――――――――――――――――――――――――




「なんで、そんな嘘つくの?」




佐伯は俺を不思議そうな目で見てくる。その目からは怒りも感じ取れた。

しかし、俺は怯むことなく睨みつけた。




「うそじゃねえ」


「どこが?だって婚約してないって言った。
 が記憶を無くしたのをいいことに変なこと吹き込まないでくれないかな?」


「変な・・・こと?」




俺はさらに眉間に皺をよせた。

との婚約はどこが変だというんだ。


俺がさらに睨みつけても佐伯の表情は動かねえ。




「うん。変なこと。は渡さない・・・」


「そういうことか。佐伯、テメエもに惚れてんのかよ」


「そうだよ。とは昔から仲がよかったんだ。も俺に慕ってくれてる。
 を跡部君、君に渡すわけにはいかない」




2人して睨みあっていた。

いや、佐伯は半分笑っているようにも見えた。

ムカツク野郎だ。




「ちょっとストップ!!」


・・・」




急に俺達の間にが割り込んできた。




「こんにちは跡部さん。それにサエ兄」


、ちょうどいいや。跡部君はどうしても認めてくれなくてね」


「何を?姉貴がすごい勢いで帰って来たのと関係ある?」


「婚約の件。昨日帰り際に聞いただろう!?」


「ああ。そういうえば昨日聞いて帰ったね」




は思い出すと、「それで?」と佐伯に問い掛けた。




「どうも跡部君がと婚約していると全てを忘れているに吹き込んだみたいでね」


「マジですか?」



佐伯から聞いたは次に俺に質問してきた。




「吹き込んだ・・・?俺は確かにと婚約していた。それはと俺しか知らないことだ」


「2人しか知らない?」


「ああ。と交わした約束だ。『結婚する』と・・・」


「・・・そうですか」




納得したように見えた

しかし、佐伯は納得いっていないようだ。




「とにかくサエ兄、家にあがりなよ。跡部さんもどうですか?」


「うん、そうさせてもらう」


「俺は・・・今日は帰る」


「そうですか・・・姉貴には俺から言っておきます」


「ああ・・・」




俺は反対方向へと足を進めた。



は俺との約束を覚えていないとは分かっていた。

結婚の約束をした日のメールで「2人の秘密ねv」と送ってきたが他の人に話していたことへの寂しさがあった。

だから佐伯の質問にも答えなかったのは佐伯が知っていたことに腹を立てていて冷静でいられなかった自分がいたからで。

は記憶がないから約束なんて覚えて無いのは分かりきっていたことなのに。

俺は最近、どうしても冷静でいられない。

こんなにもの存在が大きくなっている。

今の俺を前の俺に戻せるのは・・・お前だけなんだ・・・




―――――――――――――――――――――――――――――――――――




跡部さんは帰って、サエ兄は家にあがってもらった。




「で、サエ兄はよくこっちに来てるけど疲れない?」


「あ〜、今は幼馴染のところに泊めてもらってるから」


「不二さんか・・・でも学校は?」


「今は入試休み中」


「いいなぁ・・・」




六角高校は今が入試なんだ・・・




「でさ、跡部君とは本当はどういう関係なの?さっき跡部君が言ったことに対しても納得してたみたいだし」


「さっき言ったこと?」


「『と交わした約束だ。『結婚する』と・・・』ってやつ」




俺はさっきの出来事を頭の中で思い出していた。

そして、思い出すとサエ兄に説明した。




「簡単な話だよ。姉貴と跡部さんは付き合ってたんだから」


「付き合ってた?」




サエ兄はあからさまにイヤな顔をした。

それは、そうだ。サエ兄も俺と一緒で姉貴のことが好きだったのだから。

ただ、俺の場合はもう兄弟としかみていないけどな。




「うん。色々あったんだけど、最近は上手くいってたんだ」


「色々って?」


「ほら、跡部さんって人気あるだろ?それに家のことも。だからさ」


「ああ、なるほど。そっか・・・」




サエ兄は考え込むと苦笑いをして「悪い事したな」って。




「悪い事?」


「跡部君がと付き合ってたならそういう話が出ていてもおかしくないからさ」


「じゃあ、サエ兄も跡部さんの言ったことは嘘じゃないって思ったんだ?」


「ああ。付き合っていたなら、そう言ってくれればよかったのに。でも、悔しいな・・・
 を幸せにするのは俺だって思ってたからさ」


「しょうがないよ」


「そうだね」




サエ兄は少し傷ついた顔をしていた。

それはそうかもしれない。

今まで自分しか幸せにできないと思っていたものが、他の人に取られたのだから。




「もう帰るよ。今日は色々ごめん。にも伝えててくれないかな?」


「わかった」




そう言うと、俺はサエ兄を玄関まで送った。








「姉貴?入るよ?」


「ダメ・・・今は一人にさせてください」


「わかった。明日は学校休む?」


「いえ。それだけはしませんから」


「リョーカイ」


「ごめんなさい・・・」




微かに聞えてきた姉貴の謝罪。

どうして謝るのだろう?

誰に対しての謝罪?俺?サエ兄?それとも跡部さん?

いや・・・全員だろう。

姉貴はそういう人だから。



にしてもどうすっかな。

学校休める限度も近い。

姉貴が慣れるまで。と思ってたんだけど。

休学しかないのか・・・?


頼む。姉貴・・・











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