人間に戻れたら・・・

ずっと願ったことは叶うわけはない。

ヴァンパイアに魅入られた俺らは。





〜VAMPIRE〜
ヴァンパイア







あの怪我をした日からどれくらいの日にちが経っただろうか。
俺は、定期的にコウモリの様子を見に行っていて、今日もコウモリの集まっている湖へ来た。
コウモリ達は俺を歓迎してくれる。



「景吾様!お久しぶりでございます!」

「ああ。元気だったみたいだな」

「はい!おかげさまで」



ヴァンパイアになって得た能力。
コウモリと話すことが可能になったこと。



「最近、何も変わりないな?」

「それが・・・」

「なんだ?」



いつもならば、「異常ありません」と応えるはずなのにコウモリは言葉を濁した。



「最近はないのですが、前まで人間の男と女が館に近づこうとしまして・・・
 威嚇をして毎回追い払っていたのです」



俺は人間の男と女と聞いて、頭にはと、が侑士と呼んでいた男が浮かんだ。



「もう来ていないんだろ?それなら、問題ない」

「・・・はい」



コウモリの返事はまたもや濁っていた。



「なにか問題でもあるのか?」

「いえっ。ただ、その女が叫んでいたのが“景吾さんを出してください”と毎回・・・」

「・・・・」



はっきりと俺様の胸の中で何かが動いた。
嬉しい反面、悲しい気持ち。
2度と会うことはないと、そう思っていたから。
はあの時の約束を今でも覚えているというのか。。。



、また会おう』



そう言った自分の言葉を・・・



「景吾様、お知り合いだったのですか?」

「・・・・!いや、知らない」

「そうですか。それは良かったです」

「・・・・邪魔したな」

「景吾様?」




俺はコウモリにもバレる程、動揺してしまったのか?
あんな、少ししか言葉を交わさなかった女に俺は惹きつけられてしまったのか?

俺は、ずっとあいつだけを想っていたのに・・・想っていたはずなのに・・・
俺は、あいつを・・・雫を裏切ろうとしているのか?
人間だった俺の恋人の雫を・・・















“愛してるぜ、雫”

“私もよ景吾”



もう何年前かさえも覚えていない過去。
一般人の雫と貴族の俺。
ヴァンパイアなんているかさえも怪しかった昔。

雫との時間は幸せだった・・・
でも、それが壊れる日は近かった。
壊したのは誰でもない・・・自分・・・











 ― 壊れる直前 ―



夜道を歩いていた俺の目の前に一人の男が現れた。
その男が抱えていたのは俺の片割れの
そう・・・と俺は双子だった。
似ていない。2卵双生児なのだからしかたがない。



をどうするつもりだ?」

「景吾・・・君はヴァンパイアになるつもりはないかい?」

「断る・・・と言ったら?」

の運命は君が握っていると言っていいかもね」



男は微笑みながら語る。



「・・・俺をヴァンパイアにしてなんの得があるというんだ?」

「僕は君が嫌いなんだ。雫を取った君がね」

「雫とはどういう関係なんだ?」

「雫の兄だよ」

「雫に兄弟はいねえ」

「忘れてしまっただけ。そう、僕と雫は兄弟なんだからね・・・」



雫に兄はおろか兄弟というものすらいない。



「どうするんだい?はいらないのかい?」



しょせん、コイツはおかしくなっただけだろう。
少し茶番に付き合えば、は無事に帰ってくるだろう。

そう思っていた。



「わかった。その代わり、を早く返せよ」

「まずは、君から・・・」



そう言って男は俺に近づいて、自分の手に傷をつけ、俺にその手を差し出した。



「どういう意味だ?」

「簡単なこと。君が僕の血を少し舐めるだけだよ。ホラ、早くしないとがどうなっても知らないよ」



俺は正直、引いた・・・
他人の血を舐めろと言われて舐められるわけがない。
病気でも移されたらたまったものじゃない。


男は我慢ができなくなったのか、景吾の口に指を突っ込んだ。



「テメェ!」

「これで君もヴァンパイアだ。もう雫には君の入る隙間はないんだ・・・」

「けっ、もういいだろ!を返せ」

「君、1人じゃ可愛そうだし、も一緒にしようか」



そう言うと、男はさっきの指をの口へと運んだ。



「これでみんな一緒・・・ほら、ちょうど雫が来た」



男はを俺に手渡すと、俺の後ろを見て雫が来たのを知らせた。
後ろを振り向くと、確かに雫がいて、俺は自然と笑みがこぼれた。



「雫!」

「・・・ごめんなさい。どなたですか?」

「は?雫、冗談か?」

「名前、知っているってことは知り合いなんですよね。ごめんなさい。私って忘れっぽいから・・・名前教えてくださいません?」

「冗談だろ・・・雫・・・嘘だって言ってくれよ」

「きゃぁぁーー!!あなた、ヴァンパイアね!牙が・・・いや、来ないで・・・」



雫へとすがった瞬間、雫の視線にやけに尖った牙が見えた。
俺は雫に叫ばれたショックと、来ないでと言われたことでその後、どう雫と別れたかは覚えてなかった。




家に帰っても、部屋とかはなくて、俺はなにもかも失った・・・
人間の体と、以外のものを・・・

あいつは、病気なんて生易しいものなんてものじゃなく、ヴァンパイアというものを本当に渡しやがった・・・



「館においで。色々説明してあげないといけないからね」



でも、今はこいつにすがるしかないから・・・俺は未だ目の覚まさないを抱えてヤツの後ろを追った。
その時、自分が空を飛んでるなんて意識なんてしていなかった。







館に着くと、も目が覚めて、に1つ1つ説明した。



「なんで!?関係ないじゃない私!!」

「すまない・・・・・・巻き込んでしまって・・・」

「イヤよ!ヴァンパイアなんて!!戻して!!すぐに戻しなさいよ!!」



は男にすがり寄る。



「それは、ムリなことだよ」



でも、男の口から出た言葉は残酷なもので、それからも俺らを追い詰める言葉しか出てこなかった。



「人間からヴァンパイアになった者は、今までの存在を消される。この歴史から。
 景吾は実感したから分かっただろう。それと、ヴァンパイアの能力としては、空を飛べる、コウモリと話ができる。
 ああ、コウモリはヴァンパイアには従順だからね。あとは、弱点は日の光と銀の弾ぐらいかな?
 物語みたいに十字架とかにんにくとかはきかないから。でも、血を吸わないと生きていけないのは物語と一緒だよ。
 景吾は少しは大丈夫なんじゃない?雫の血、たくさん吸ったんだし」



・・・雫の血を吸った・・・?誰が?・・・俺が?・・・



「嘘だろ・・・」

「もしかして覚えてないの?雫に叫ばれて、とっさに君、噛み付いたんじゃない。おかげで、雫は死んじゃったけど。
 大丈夫、雫は1人じゃないから。すぐに僕も追うさ。殺すなんて許せないけど、雫が取られる心配はもうしなくて済むからね、
 早く僕がこうしとけばよかったのかもしれない」




俺は、自分の手で雫を・・・



その後は覚えてない。ただ、がそっと俺の傍にいてくれたことだけ覚えている。
気がつくと、そいつの姿は消えていて、から本当にいなくなったと聞いた。
そして、あの男がヴァンパイアになったきっかけは妹の雫を好きになり、でも、愛すことは兄弟なため許されない。
そんな世の中を憎み、壊してやりたいと思ったからだそうだ。。。







恋は人を狂わせる。
ヴァンパイアも人間も同じ気持ちを持っているのに・・・
なぜ、ヴァンパイアは愛することを禁じられているんだろうか・・・










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